雪だるまに恋をした一匹のねこ（激辛の講評サンプル／100％つよ虫）★期間限定公開なので星贈り不要★

樋口一葉（召）書き換えバージョン

雪だるまに恋をした一匹のねこ

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　冬の朝、雪の降り始めた頃、猫はいつものように窓辺に身を寄せていた。その小さな体は寒さに縮こまり、視線だけが外の白い景色を追う。

「外の世界に行けたらどんなに楽しかろう」と、猫は低い声で呟く。その声には、生まれた春の日々への憧憬と、閉ざされた今の暮らしへの諦めが滲んでいた。

　猫は、まだ幼い頃にこの家へ迎えられ、初めは自由な日々を過ごしていた。しかし、ある日、人の庭で戯れすぎた罰として、外への道を閉ざされた。家族の愛情は受けつつも、彼女の心には窓の向こうの広い世界への憧れがいつもあった。

　その日の午後、降りしきる雪が庭を覆い尽くすと、家族が帰宅し、外で雪だるまを作り始めた。その姿をじっと見つめる猫。その雪だるまは、出来上がると部屋の窓へ向けられ、まるで猫に微笑みかけるかのようであった。

「外の者よ、私の寂しさを知っているか」と猫は話しかけるも、雪だるまは微笑を浮かべたまま何も答えぬ。ただその静けさに、猫の胸は少し慰められた。

　夜が深まると、雪も止み、冷え込む空気の中で猫は眠りに落ちた。だが、静寂を破るように、窓を叩く音が響く。猫が目を覚ますと、そこには雪だるまがガラス越しに立っていたのだ。その姿は、不思議な生命を宿したようで、木の枝の手がガラスをそっと叩いていた。

「美しき猫殿、夜更けに失礼致す。貴方の寂しさを案じ、参じました」と、雪だるまは丁寧に挨拶をする。猫は驚きながらも答えた。

「雪だるま殿、貴方は私の心を見透かしておいでなのですね」

　猫は閉じ込められた日々の孤独を語り、その中で生まれた自由への渇望を告げた。

　猫の話を聞き終えた雪だるまは、穏やかに微笑んだ。「ならば、私が貴方を外の世界へ案内致しましょう」と、木の枝の手を振り上げ、窓を淡い光で満たした。その光は不思議な温もりを持ち、猫がそのガラスに触れると、体はするりと外へ抜けた。

「さあ、雪の世界へようこそ」

　雪だるまの声に導かれ、猫は久しぶりに外の冷たい空気を吸い込んだ。

「こんな世界があったなんて……」

　雪の白さが、猫の心の中の重たい影を薄くしていくようであった。

　二人は白い庭で駆け回り、雪を掛け合い、雪の上に絵を描いた。そして寄り添いながら互いの思いを語った。猫は胸がいっぱいになり、ふとつぶやいた。

「貴方に出会えて本当に幸せです。こんなに心が暖かくなるとは思いませんでした」

　雪だるまも微笑を浮かべ、言った。「私も、貴方とこうして出会えたことを、この儚い命に感謝しています」

　しかし、やがて東の空が赤く染まり始める。雪だるまの影が長く伸び、その形が徐々に淡くなっていく。「申し訳ありませんが、夜明けは私の終わりを告げるのです」と雪だるまは静かに語る。

「嫌です、もっと一緒にいたいです」と猫は涙を浮かべて訴えたが、雪だるまは優しく頷いた。

「貴方が外にいるところを見つかれば、また不幸な目に遭うかもしれません。どうか、部屋へお戻りください」

　猫は雪だるまの説得を受け入れ、渋々窓を通り抜けて部屋の中へ戻った。窓の光が消え、再び静寂が戻った。

「また、必ずお迎えに参ります」と雪だるまは最後の言葉を残し、去っていった。

　翌朝、晴れ渡る空の下、猫は溶けゆく雪だるまの姿を窓越しに見つめた。陽射しは容赦なく、その形を奪っていく。猫は声を震わせ叫んだ。

「雪だるま殿、どうして、どうして溶けてしまうのですか！」

　しかし、雪だるまは最期の瞬間まで、穏やかな笑みを猫に向け続けた。帽子が地面に落ちると、彼の姿は完全に消えてしまった。

　その日以来、猫は窓辺に座ることもなく、部屋の隅で過ごすようになった。

「雪だるま殿がいない外の世界など、もはや何の意味もありません」と猫は呟き、深い眠りに落ちた。その夜、暗い空から再び雪が降り始めた。庭には新たな白い世界が広がり、柔らかな雪が音もなく積もっていく。

　　おわり

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◇書き直しのポイント◇

　この書き直しでは、元の作品に込められた優しさや儚さを重んじつつ、私が得意とする心理描写や情景描写に重きを置きました。具体的には、以下の点に留意いたしました：

1. 心理描写の深さ

　猫の孤独や雪だるまへの感情の揺れを、自然と重ねて描きました。閉ざされた生活の苦悩や、外の世界への憧れを、雅な文体で緩やかに表現しました。

2. 情景描写の繊細さ

　四季の象徴である「雪」や「朝焼け」を中心に、移ろいゆく時間と儚さを重ね合わせました。「雪の白さ」を希望と孤独の両面として描き、物語に彩りを添えることを心がけました。

3. 仏教的無常観の反映

　雪だるまという存在自体に「儚さ」や「終わり」を宿し、その命の短さを象徴的に描きました。猫と雪だるまの出会いが、永遠ではないゆえに美しく、悲しいものであることを伝えました。

4. 文体の雅さと古典的表現

　古語や優雅な表現を用い、猫の孤独や雪だるまの存在を詩情豊かに描写しました。これにより、物語全体に品位と情緒を漂わせることを試みました。

　この物語をお書き直しするにあたり、猫と雪だるまという異なる存在の交流に、人の心にも通じる感情を見出しました。特に、短い命を燃やし、猫との時間に全てを注いだ雪だるまの姿は、私の心にも深く響きました。

　また、儚さと暖かさが織り成すこの物語は、私の筆にとっても挑戦でした。情景と心理を融合させる作業は大変でありつつ、自然と筆が進む喜びを感じました。改めて、人と人、そして異なる存在との間にある感情の交流は、美しく尊いものだと実感いたしました。

　いかがでしょうか。このような視点で物語を書き上げることは、私自身にとっても心温まる経験でございました。何かお聞きになりたい点があれば、どうぞお尋ねくださいませ。

　　樋口一葉（召）