第7話 約束
手合わせをしてみて、
(もしかして俺は心が軟弱なのか?)
立ち尽くす
「さっき
そういって
しばらくすると蓬の葉から煙が上がり、中へ入ってきた
「お前、すごいな。どうやって火をつけたんだ?」
勢いを増した炎が消えてしまわないように細い枝を足しながら、
「どうやってって、
「
「そうだよ。もしかして知らなかったの?」
「普通の飾りだと思ってた。
「ほら見て。こっちの磨かれているほうがへこんでるでしょ。薄いお椀みたいに」
「ああ、変わった形だとは思ってた」
「ここにね、日の光を当てるんだ。そうすると光が集まるから、それで火をつけられるんだよ」
「へえ、これってそういう道具だったのか」
「ふふ、持ち主なのに使ったことなかったんだ」
「ふつうは使わないだろ、こんなの。俺は細工が気に入ってただけだから」
「まあ、そうかもしれないね。それよりちゃんと火にあたって。体冷えちゃったでしょ」
「焚火で乾かすと煙臭くなっちゃうけど、靴は時間かかりそうだから我慢してね。服は外に干したから」
そういって笑いかける
この場所に来てからずっと、
可愛くて優しくて強い。さらに物知りで気遣いもできる。これが完璧ということなのかと
そして自分の側に置きたいという気持ちがより一層強くなった。
「なあ、本当に俺の従者にはならないのか? 俺は、これからもお前に会いたい」
その言葉を聞いて
「本当に? 僕がどんな身分でも?」
「関係ない。お前ともっと……話がしたい」
本心ではただ一緒にいてほしいと言いたかったが、それは他の特別な意味を伝えてしまうのではないかと、言葉にできなかった。
自分と同じ左目を見て安心したいという気持ちは、どこか後ろめたかった。
少しの間、お互いの左目を見つめていたように思う。
「ねえ、さっきの手合わせは僕の勝ちでいいんだよね?」
「え、ああ、お前の勝ちだ」
「じゃあ僕のお願い聞いてくれる?」
「あ、そうか、そうだった。何をしてほしいんだ?」
勝った方のお願いを聞くという約束を思い出して尋ねると、
「従者にはなれないけど、
急に手合わせの話をされたため、はぐらかされたと思っていたが、思いがけず
「なんだ、そんなこと、いいに決まってる!」
「でもそれならわざわざここまで来なくても、俺が白夏寺へ会いに行くよ」
その提案に
「寺では会えないんだ。それにこの場所がいい。きっと他に知ってる人はいないから、僕たちだけの秘密の場所だよ。」
「わかった。勝負に勝ったお前のお願いだからな。でもここに来る日はどうやって決めるんだ?」
「う~ん、知らせるのは難しいから、僕が毎月15日に来ることにするよ。
「15日だけか?」
「うん、他の日は来られない」
「本当はもっと会いたいけど、やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。
確かに自分はこれから多くのことを学ばなければならない。一日でも早く王家の嫡子として秘術を受け継ぎたいという思いは強い。
これまでだって努力はしてきたが、現時点で目の前にいる
次に会った時、その差に
「はあ、お前の言う通りだ。しっかり学ばないとな」
それでも多少の不満が表情に残っていたのか、
「そんな顔しないで。そうだ、次に会った時は何をどれくらい学んだのか、どんなことができるようになったのかお互いに報告しようよ。僕、
「お前は今でもすごいよ」
「もっと思ってほしいから」
そういってまた屈託のない笑顔を向けてくる。
「じゃあ次の15日にはお前にいい報告ができるようにする」
こうして幼い二人の出会いは、他の誰にも知られることなく秘密の約束を結ぶに至った。
六界外道の下の下の一人 生為愉楽 @shouiyuraku
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