第61話 遥か遠い過去 Ⅵ


 人類が惑星スクエニアに降り立ち四〇〇年が経過した。


 当初はこの地で人類が発展して行く事は難しいとされていた。その理由はこの星には石油が無かった為である。


 しかし、その予想に反して人類は大いに文明を発達させて行った。その大きな理由に『魔素』という元素の発見があった。


『魔素』とは人の持つ意識に反応し、その性質を変化させるという特性を持っていた。

 簡単に言えば『熱くなれ』と思えば熱を発し、『冷たくなれ』と思えば冷えるという物である。

 しかしそれは誰の意識にでも反応する訳では無く、扱う者の適性が必要だった。


 そこで誰しもが扱え利用出来るようそのメカニズムを解明し、可視化させた人物がいた。その名は『イリーニャ・パブロスカヤ』


 彼女は本物の天才であったのだ。


 フレイの体を実験台として解明し可視化、図式化したそれは『魔導回路』と呼ばれた。


 そしてその魔導回路を起動させる動力源としては『九條郁朗』が不老不死の材料として各地で様々な素材を収集した物の中で偶然発見した『魔石』と呼ばれる物が使われた。


 魔石とは大気中の魔素を取り込んで溜め込む性質を持つ物資であり、それを魔導回路に組み込む事によって炎や風を生み出す事を成功させた。


 この魔石と魔導回路を用いた道具は『魔道具』と名付けられた。


 炎や風を生み出す魔道具を利用し更に人類は電気を生み出せる様になった。電気を得た事によりこの地でも人類は発展して行く事となったのだ。


 魔道具にはただ小さな火を灯すライターの様な日用品から車、飛行機といった乗り物まで幅広く作られ人々の暮らしを豊かにさせた。


 そして人類は一箇所に留まらず、この惑星の様々な地へ移り住み、移ったその地でそれぞれが国家を建国し繁栄して行った。


 最終的には人類は地球に居た頃と変わらぬ程の高度な文明を築くまでに至った。


 だが、人類が発明したのは便利な物だけでは無かった。魔導回路と魔石を用いた兵器『魔導兵器』も各国で盛んに開発されていった。

 その魔導兵器の威力は絶大で核兵器に勝るとも劣らない威力があった。




 居住地を広げる為木々を伐採し、魔石を採掘する為に大地を掘り返し自然を破壊して行く人類を元々この地にいた亜人達は疎ましく思っていたが、急速に数を増やしていった人類に対抗する力は持ち合わせていなかった。


 この地の亜人達は長寿ではあったが、それ故か子孫をあまり多く残す事は無く、それとは逆に短命ではあるもののその数をどんどん増やしていく人類はこの地に住む亜人達から見れば恐怖の対象であった。


 そんな人類はこの地に元々住んでいた亜人達の事など歯牙にもかけず、魔石を求めて国同士での争いが絶えなくなっていた。


 そしてその争いはどんどん激化して行き、最終的に魔導兵器を用いた戦争へと発展して行ってしまった。


 その戦争は凄惨を極め、それまでに増やしていた人口の三割程がその戦争の犠牲者となった。



 この、人類が起こした身勝手な戦争に現地の亜人達はとうとう我慢の限界を迎えた。


 特に魔人族は前々より人類と敵対していた事もあり人間を排除するのは今しかないとばかりに総攻撃を仕掛けた。


 人類同士の戦争で疲弊していた所に魔人族の襲来で人類は一方的に蹂躙される事となる。


 魔族の襲撃は凄まじく、それまで溜まった鬱憤を晴らすかの様な攻撃によってそれまでこの地で築いてきた文明は跡形も無く破壊され尽くした。


 このまま人類が滅んでしまうかと思われたその時、一人の少女に神からのお告げが下った。少女の名は『シエスタ』と言い、神は自らを『シアンレーゼ』と名乗った。


 その神、シアンレーゼ曰く


『これまでの行いを悔い改め、祈りを捧げよ、さすれば抗う力を与えん』


 との神託であった。人々は必死に祈った。人類の存亡がかかっている今、祈る事しか出来なかった。


 そしてその祈りは通じ、シエスタの前に三種の神具が現れた。


 一つは心の清い者にしか扱えず、それを手にした者は身体能力を大きく強化する事が出来る『覇者の剣』


 一つは大量の魔力と引き換えにどんな傷をも癒し、死者を蘇らせる事さえも出来る『癒しの杖』


 そして最後の一つは運が良ければ最強の武器にもなり得るが、運が悪ければ全く役に立たない代物になってしまう『神々の気まぐれ』と呼ばれる武器であった。


 人類はその三種の神具を持って襲いかかる魔人から存亡を賭けて戦った。


 これが後に『人魔対戦』と呼ばれる戦いである。


 その戦いは桃瀬がこの世界に転生されて来る千七百年前に起こった出来事であった。





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ようやく二章完結まで至りました。リアルタイムで追って来て頂いた方には遅筆で大変ご迷惑をおかけしたかと思います、申し訳ございませんでした。


そしてここまでこの作品をお読み頂いた皆様、本当にありがとうございますっ!!

皆様の貴重なお時間を私の様な未熟な作者の作品に御付き合い頂けた事に感謝の言葉しか出ません、本当にありがとうございます。


差し出がましいお願いではございますが、この作品を少しでも楽しんで頂けましたならレビュー等頂けましたら大変嬉しく思います!!


三章も頑張っ書いて参りますので是非とも御協力頂けましたら幸いです。



そしてこの作品を読んで頂いた皆様に今後ともご健康とご多幸があります事を願って挨拶と変えさせて頂きます。



中の人 きみちん




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【二章完結】魔女と紅茶と妖精と きみちん @kimiosan

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