ふわっと柔らかい、繊細で丁寧な情景描写。作者さまのやさしい言葉で読者は知らず、魔女の棲む森に座らされているのです。切り株のそばに。作者さまが横にいらっしゃる。お茶をすすめてくださる。秋の穏やかな陽光、樹々のあいだを落ちてくるひかりを感じながら、わたしたちは、登場人物ふたりの、なんとも素敵な時間をしばらくの間、共有させていただくことになります。その体験の、なんて心地よく愛おしいこと。
秋の魔女と少女の心温まる物語。淡々と描かれた美しい文章が、秋の美しさ、物悲しさを見事に表現しています。
ほかの方のレビューにも書かれていますが、児童文学や童話のような文体と雰囲気が印象的な作品です。魔女が出る物語だけでなく、童話風の作品が好きな方にもお薦めです。 物悲しくもどこか温かい印象の良作短編ファンタジーです。
穏やかな語り口調で紡がれる、鮮やかな森の秋の光景。森の奥へと入った少女は、そこで不思議な出逢いをするのです。やさしい秋の魔女と少女の交流は、秋の間中続いていくのですが――。秋の魔女と少女の距離感がうまく、人でない魔女の心の内も、台詞や描写によく表されています。どこか物悲しさが漂いますが、空気感はとてもやさしい。余韻の残る素敵な秋色の短編作品です。
児童文学のような、絵本のような語り口調。言葉の選択が美しいです。水彩絵の具や色鉛筆で描いたような風景が浮かびます。魔女のネタはたくさんありますが、季節の魔女、というアイディアがうまく活きていると思いました。他の季節にも出会ってみたいです。
森で出会える魔女は数多くいると思われますが、秋という季節とともにある魔女が、本作の魔女です。人間とは違う尺度で動く彼女がひととき、人間の女の子と交流するのですが、巡る季節のさだめのなかで起こった、小さいけれどあたたかな出来事となっていて、よかったです。