ゴミ

白川津 中々

 皆、腹が出ている。

 世の中無差別に喰らい、それを当然として品評し、あたかも食通であるかのように講釈を垂れる人間ばかりだ。物の味など分からぬくせに何を語る。滋養も奥行きもない、彩りだけ塗り固めた粗末な餌以下のゴミを貪っている分際で。貴様らのおかげでゴミだらけだ。もはや現代に食はない。ゴミをテーブルに並べて、お召し上がりください。いただきます。そんな悍ましい形骸文化が残っているだけだ。

 ゴミを尊び、喜びながら口に運ぶ蝿どもの、腹ばかり出て身にならぬ物を好む悪食どもの垂れ流す糞がまた世に流れ人の口に入っていく。それがどれだけの罪か分からないのか。分からないだろう。分からないから腹ばかりが出ているのだ。そして私も腹が出てきた。ゴミしか食えぬから、ゴミしかないから。私ももはや罪人だ。

 みんな、ゴミに埋もれながら、ゴミになりながら死んでいく。私もゴミだ。掃き溜めに蠢く虫に劣る、価値のないゴミだ。私も皆も、ゴミなのだ。ゴミとして生き、死んでいくしかないのだ。どうしてこうなったのか、ゴミの私には、分からない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゴミ 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ