彼女の側
白川津 中々
■
目が覚め暗闇。隣には彼女がいる。夢とは違う、彼女が。
夢の中の彼女とは所謂男女の付き合いはなかった。
話しをして、コーヒーを一緒に飲んでさようなら。そんな関係。堪らない欲望を抑え自室に籠っては彼女の名を呼び白濁を吐き出す。どうしようもない、情けないばかりの日課を終えて床に就いて朝を迎えて、また、彼女と話す毎日だったあの日の夢を、俺は未だに見る。
彼女に俺の気持ちを伝えようとした事はある。だが、俺は彼女を愛しているのか自信がなかった。彼女の身体が目的なのではないか。あるいは、他者の羨む視線が欲しいだけなのではないか。彼女の、彼女自身以外の要素に惹かれてしまっている自分がいないわけではなく、邪な理由で彼女を欲しているという不甲斐なさが、一歩踏み出す気概を消滅させていた。そんなうちに、彼女とは離別した。理由はもはや覚えていない。ただ、彼女と二度と会う事がなくなったという事実が残っているだけだった。
隣を見る。彼女ではない女が寝息を立てて、安らかな顔をしている。
彼女が彼女だったら、俺は幸せだっただろうか。また、今の俺は、幸せではないのだろうか。
夜が更けていく中、俺は目を閉じ夢の続きを求める。彼女が今も、俺の側にいる。
彼女の側 白川津 中々 @taka1212384
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