見えない親友

大隅 スミヲ

ミエナイシンユウ

 子供の頃、わたしにはみんなには見えない友だちがいた。

 彼女とは、学校の裏山にある神社ではじめてあった。


 壊れかけた鳥居と首の取れてしまった狛犬のいる神社の境内に彼女はいた。

 みどり色の服を着たショートカットの女の子であり、その姿は絵本で見たピーターパンにどこか似ていた。


 わたしは彼女に「友だちになろう」と話しかけた。

 彼女はわたしに無言でうなずいた。


 その日からわたしと彼女はいつも一緒だった。

 親友みたいだった。


 彼女のことがみんなには見えていないようだった。

 それでもわたしは構わなかった。

 わたしだけの親友。それでじゅうぶんだった。



 きょう、男子たちに石をなげられた。

 男子たちはわたしのことを化け物だといった。

 いつも独り言をいって気持ち悪いともいった。

 許せなかった。


 男子の投げた石のひとつがわたしの額にぶつかった。

 一瞬、目の前がまっくらになった。

 額から流れ落ちた血のしずくが、地面に落ちた。


 気がついた時、わたしはあの神社で彼女に膝枕をされていた。


「もう、だいじょうぶ」

 彼女は優しい声でそういった。




 翌日、学校へ行くと先生たちが集まって、なにか話をしていた。

 近くにいた他の子たちも騒いでいた。


 男子3人が、昨日から家に帰っていないらしい。


 その男子たちの名前を聞いた時、額の傷がズキンと痛んだ。

 3人はわたしに石を投げてきた男子だった。


 放課後、わたしはあの神社に行った。


 境内でひとり座っている彼女を見つけると、隣りに座って話しかけた。

 男子3人が行方不明になっていて、大騒ぎになっているという話をした。


 彼女はその話を聞くと、ニタリと笑みを浮かべた。



 その日を最後に、彼女はわたしの前から姿を消した。

 あれから20年の月日が経っているが、彼女の存在も消えてしまった3人の男子の行方もわかってはいない。

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見えない親友 大隅 スミヲ @smee

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