現代ファンタジーの皮をかぶったスプラッタコメディ

 あらすじの簡素な文面から、既にアクセルベタ踏みの狂気が漂っていますが、中身もまた裏切りません。
 主人公が啜り味わう血液の冒涜的な食レポが、のっけから綴られています。それがなんとも流暢な比喩で物語られるので、多少のスプラッタは大丈夫な人でも、ともすれば怪訝な表情をしてしまうかもしれません。
 とはいえ、それは文章の伝達能力が優れていることの証左でもあるため、そんなスプラッタでシュールなブラックコメディを読みたい方には、特記してオススメできる作品でしょう。

 人間から怪物へと転じてしまった主人公が、その境遇を受け入れるか否かで揺り動かされるという作品は数多いですが、本作はその類型を破っている点でも個性的です。

 果たして、それは喜劇と呼ぶべきか、悲劇と呼ぶべきか……。

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