最終話 エンドロップと僕。

 僕はどうしようもなく頼りない。


 先輩方と最終日に呑むはずだった労い酒も取り上げられた。


 大学も、何となくで決めた。


 でも、この『南極探査員』という職に就きた いと思ったのは、初めて自分の意思を見つけられたからだったんだ。


 だって、地球を丸ごと変えてしまうような、そんな力を、南極は秘めているんだ。


 君はもしかしたら、古代の地球からの警告なのかもね。地球の使者だなんて、ちょっとロマンチックだとは思わないか?


「エンドロップ!!」


 何やかやと言い訳を並べ立てた僕は、トラックから飛び降りて、八代やつしろさんと堀田ほったさんの問い掛けを背に、雪上を走った。


 ビュンビュンッと頬を切る冷たい風が、何だか応援歌のように聴こえて、少しにやけてしまう。


「エンドロップ! いるなら返事してくれ」


 自分の荒い息か、南極の暴風かが分からなくなった頃、あの鳴き声が聞こえた。


「エン……オップ! ロォ……」


 僕はまだ、君のことを知らない。


 なのに、どうしようもなく君に惹かれている。


 うん、何となく、かな。


 でも。


「エンドロップ。また、お昼ご飯を食べよう」


 南極で生まれた僕の思い出は、僕にとって唯一無二、一生の宝物だと、胸を張って言える。




 ――完――

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エンドロップと僕 がてら @Gattera

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