「時を超えた想い」などというのはベタな表現であることは百も承知。だがそれでも、この作品を語る上でこの言葉は外せないと思う。
私の愛読書の一つである藤沢周平の『風の果て』は、藩政の実権を握った主人公の元に旧友からの果たし状が届き、過去パート(政争の末主人公が勝利するまで)と現在パート(果たし状を受け取ってから旧友の足取りを追い、決闘当日に至るまで)が交互に描かれ、やがて二人の対決に向けて集約していく……という構成を取っていて、私を構成マニアに変えた傑作であるが、本作もそんな私を唸らせる構成になっている。
ネタバレを避けるために詳細は読んでのお楽しみとするが、過去(第二次大戦下)と現在(今の日本)を1話交互に描くことで、読者を飽きさせない展開となっている。その構成に華を添えるのが、竜というファンタジー要素、そして音楽を巡る二人の女性との関係である。また、過去編の戦時下のフランスについても、重くなっていく空気を丁寧に描写していて、没入感を高めている。
贅言は不要だ。この作品を無料で読めるカクヨムに感謝しながら、この宝石の輝きを楽しもう!
とても面白かったです!
本作は戦時下のパリと現代日本とを1話ごとに行き来する、少し変わった手法を使って書かれています。
最初は全く関係ない別のエピソードに見えたものが徐々に繋がりが見えていき、クライマックスに向けて全てが明かされていく構成の巧さに読んでいて夢中にさせられました。
作品名にもなっている「二重奏」の意味が明らかになった瞬間はとても感動的でしたので、ぜひ最後まで読んでいただくことをオススメします。
音楽をテーマにした作品なので、作中には様々なクラシック音楽が登場します。
実際に聴きながら読んでみると、より作品世界に浸れること間違いなしです。
世代を問わずどんな読み手にもおすすめしたい素敵な作品です。
キャッチコピーの「音楽×歴史×謎×ファンタジー」「バイオリン弾きのドラゴン」という文言に惹かれ、どんな内容なんだろう?と冒頭を読んでみたら……。
導入はファンタジー、次は戦時下のフランス、その次は現代の日本!?
一体どういうお話なの~!?と思った時にはこの作品が奏でるハーモニーの魅力に絡め取られていることでしょう。
個人的にドラゴンも宝石もクラシック音楽も好きなので、好物しか出てこないフルコースのような作品でした。最後まで楽しく堪能致しました。
普段クラシック音楽は聴かないという方も、この作品に登場した音楽家の曲に触れてみたらきっと楽しいと思います。
音楽に限らず、絵画や建造物や本などの昔から受け継がれているものは、後世に遺そうと誰かが思って行動したから現代に存在しているわけで、そういった人の営みって尊いよな……という気持ちにもなりました。
二人の友情が永く続くことを願ってやみません。