第6話

 全裸となったクラレスは、死装束でも掛けるように、外した鎧でピコの体を覆った。


 前方の闇間に向けて銃を構えたまま伍長が叫ぶ。


「来たぞ! 奴らの狙いは、こいつらだったんだ!」


 ドンジーが赤い野球帽を投げ捨てて言う。


「生き残りが居たんですね。絶滅なんてしていなかった。古代の地下施設の遺跡に隠れて生きていたんだ!」


 全裸のクラレスが静かに頷いた。


「千年前に私たちから追い遣られて、宇宙に脱出した人間たちが、地球を取り戻しに帰ってきたのね」


 伍長が銃身に頭を添えて言う。


「いいや、助けに来たのさ、こいつらを。俺たちロボットを倒すことができる強力な武器を携えて」


 クラレスは銀色のボディを斜めにして構えると、乳房部分の排気口から強くガスを噴出しながら言った。


「非力で頭が悪い人間どもが、たんぱく質でできた体で我々の金属の体と互角に戦えるはずがない。鎧をはずしたから稼働速度もパワーも四十パーセント以上アップしたわ。素手で引き裂いて、臓器を取り出してやる!」


 闇の奥から無数の足音が近づいてきた。


「来い!」


 伍長は両目を赤外線モードに切り替えると、演算して予測した敵の進攻路に銃の狙いを定める。次の瞬間、闇間から伸びてきた赤いレーザー光が隣のドンジーの頭部を貫いた。


「ぉぉおおおおおおおお!」


 暗闇の中から叫び声と共に駆け出てきた人間たちは、どの個体も、ロボットたちの遺体から剥がした超合金のを繋げて身にまとい、ロボットたちの機械内臓を繋ぎ合わせて作った高出力のレーザー銃や電動カッターを握っていた。無理に組み立てた武器からは黒いしたたっている。


 その目つきは獣のように鋭く、瞳は恨みに満ちていた。


 二体のロボットたちは、算出された恐怖指数が大き過ぎて体を動かすことが出来なかった。二体はそのまま無残に解体されるしかないのだと悟った。


 人間たちの群れが近づいてくる。


 伍長とクラレスの合成音声による悲鳴が地下空間に響いた。


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