第1話

 ドゥキュキュキュキュキュキュン!

 

 夕陽に照らされた広大な平原に超電導レールマシンガンの高い銃声が鳴り響いた。その後に爆音が鳴り響き地面が揺れる。飛び散った土を被った兵士の受信装置に、セントラルセンターから指令が届いた。


『敵に我々の通信を解読されている。これより音声による双方向伝達方式に切り替える。意思伝達は音声。以上』


 塹壕ざんごうの中で身を低くしたまま、トゥエジェランジー・トゥレジェクローネ伍長は声を張った。


「分かったか! 音声での会話以外は禁止だ! ネット環境を利用した電波通信も対面での赤外線通信も無効にしろ、敵に位置を知られるぞ!」


 飛んでくる弾丸らしき発光体を避けて、横で背を丸めているオレンジ色の防具の兵士が答えた。


「了解しました! 不可視レーザー通信も解除ですかあ!」


「当然だ、敵に位置を知られると言っただろうが! 今使えるのは音声だけだ! 味方との遣り取りは直接言葉で伝えろ!」


「日本語でよろしいのでしょうかあ」


「ここは日本だぞ! 現地言語を使用するのが軍の規則だ! それに従え」


「了解です。しかし、自分は記憶している日本語の語彙が少な……」


 小径の火球の直撃を側頭部に食らったその兵士は、頭部の半分以上を砕け散らせてその場に倒れた。


 トゥエジェランジー・トゥレジェクローネ伍長は周囲の他の兵士たちに声を飛ばした。


「無駄口を叩くな! 接近戦になれば音でも位置を特定されるぞ! 会話をするときは手短に話せ! 呼称も階級だけでいい!」


 線の細い体型の兵士が他の兵士を見回してから言った。


「伍長! 我々は皆、一等兵であります! 階級では識別がつきません!」


「ならば、通信用のハンドルネームを使え! それなら重複はしないし、敵にも身元を探られずに済む!」


「了解です」


 爆風を避けて身を屈めてから頷いたその兵士は、後ろを向いて隣の兵士に伍長の指示を伝えた。聞いた兵士が反対隣の兵士に指示を伝達する。兵士たちは伝言ゲームのように指示を流していった。

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