エピローグ・君に振り回されながら、これからも二人で


「お待たせ、待っちゃ~? 略してお抹茶! 茶緑ガラシャ様の配信がはっじまっるぞ~っ!!」


「姫、ここ拙者のチャンネルでござるから。拙者よりも大目立ちしないでくだされ」


「んだよ~? 久々の一対一コラボだってのに、テンション低いじゃんかよ~! こたりょ~はぶぉくと遊べて嬉しくないってのか~?」


「……嬉しいでござるよ、本当に。今も変な感じにならないように自分を律するので精一杯でござる」


「おうおうおうおう! かわいいこと言いやがって~! この~、こたりょ~め~!」


【初手からイチャつきやがって、この主従は……!】

【前にも増して、姫様がデレッデレになってない?】

【う~ん、これはいい始まり!】


 ……それから暫く時間が経って、嵐魔琥太郎と茶緑ガラシャに対する世間の注目が少しだけ落ち着いた頃、ついに多くのファンたちが待ち侘びたその時がやってきた。

 姫と忍者、結成一か月記念コラボ配信……一か月記念と銘打ってはいるものの、どちらかといえば二か月の方が近くなってしまった時期ではあるものの、延期に延期を重ねたこのコラボがようやく実現したことを、抹茶兵も嵐魔衆も喜んでくれているようだ。


 事件が起きる前、二人でコラボしていた時と何ら変わらない……いや、その時よりもテンションが高くなっているガラシャの様子と、そんな彼女に振り回される琥太郎というおなじみのやり取りを見守るリスナーたちもまた、嬉しそうに笑みを浮かべている。

 楽しい雰囲気の中でオープニングトークを終えた二人は、早速本日の配信の企画内容を説明していった。


「今日の配信はね~、ぼくの恩人であり、いつも迷惑をかけているこたりょ~に報いるため、こいつにぶぉくの全部をくれてやろうと思ってるんだ~! ガチ恋勢のみんな、ごめん……! 今日はぼく、こたりょ~のものになります……!」


【エッッ! そんなシーンを配信で流していいんですか!?】

【大丈夫、お前にガチ恋勢はいない】

【この発言自体がこたりょ~の迷惑になってる気しかしねえwww】


「姫~? 言い方が悪いでござるよ~? 姫の次の衣装を考える権利を貰っただけでござるからね? そんな、危ないことはしないでござるよ?」


【いや、お前は全部をもらってもいいくらいだろ……】

【そこまでやっても炎上しないような気しかしない】

【未だかつてここまで女性Vに大胆な発言をされながらも燃える気配がない男性Vがいただろうか……?】


 若干どころか普通に危ない発言が飛び出す中でも、むしろ同情される琥太郎への温かいコメントが飛び交う。

 もうこういうやり取りが恒常化しているとわかっているリスナーたちが見守る中、画面にどどんっ、と肌色成分多めな画像が表示された。


「おら~っ! どうだこたりょ~!? ぶぉくの下着姿だぞ~!」


「……これ、大丈夫でござるかな? 拙者の配信、BANされたりしない?」


「おい! まず真っ先に出てくる言葉がそれってどうなってんだ!? ぼくのセクシーショットを無視してんじゃねえ!」


「ごめんなさいでござる。でもやっぱり、そっちが心配で……」


「ちっ……! こんなことならすあまの言う通り、下着姿じゃなくって素っ裸の画像を送ってやるべきだったな。そうすればBANが確定して、ある意味心配なんかしなくて済んだもんな……! よし! 今から送ってやるか!」


「止めて! そんなことされたら配信どころかチャンネル自体がBANされるでござる!!」


【やっぱりやることがぶっ飛んでるVSP、こたりょ~は強く生きてくれ】

【すあまがすあまで草www】

【上手くいけばガラシャの素っ裸画像が見れたのか……いや、下着姿でも十分得してるんだけどさ】


 恩を返されているはずなのにいつも通り振り回される琥太郎の様子に大爆笑するリスナーたち。

 琥太郎もとい、明影もまた馴染み深いこのやり取りが帰ってきたことに喜びを感じる中、ガラシャこと環と行っている通話アプリに、メッセージが送られてきた。


『絶対、配信には乗せるなよ』


「ん……?」


 予定にないその行動に戸惑いつつ、琥太郎のアバターに自身の困惑が反映されないように気を遣う明影。

 環とのやり取りを映すモニターへと視線を向けた彼は、第一のメッセージに続いて送られてきた画像を見て、噴き出しそうになるのを必死に堪えた。


「んっ、ぐっ……!?」


「お~? どうした、こたりょ~? ぼくのせくちーさを目の当たりにして、ようやく恥ずかしさが込み上げてきたか~?」


 自分をからかうガラシャの、環の声を聞きながら、やってくれたなと明影は思う。

 アバターである琥太郎には反映されていないが、今の彼の顔は真っ赤に染まっていた。


 彼が見つめる二枚目のモニターには、配信画面に表示されている茶緑ガラシャと同じ鮮やかなエメラルドグリーンの下着を身に着けた環自身の写真が映し出されている。

 上から下まで、少し恥ずかしそうにしている表情から胸の谷間、丸みを帯びたお尻や少し肉付きのいい太腿までをしっかり映した写真を送ってきた彼女は、三件目のメッセージで明影にトドメを刺しにきた。


【今度、一緒に服を買いに行くからな。その時にぼくに何を着せるか、これ見てよく考えておけよ】

【追伸、に使ってもいいぞ。ぼくは寛大だからな!】


「にゃっはっはっはっは! さてさて~、童貞のこたりょ~はぶぉくをどんなふうにコーディネートしてくれるのかな~? 楽しみにしてるぞ、こたりょ~!」


【今こそ、こたりょ~のセンスが試される時!】

【いっそこのまま提出して、下着姿新衣装と銘打って羞恥プレイさせようぜ】

【姫に恥を掻かせたら手討ちにされるだろ! いい加減にしろ!】


「ぬっ、ぐぅ……!?」


 表でも裏でも、自分を翻弄するお姫様の言動にはいつも振り回されっぱなしだ。

 でも、そんな日々を悪くないと思っている自分がいる。


 これからも、誰よりも近くで彼女の笑顔を見続けられるのなら、この扱いも悪くないと……楽しそうに、幸せそうに笑う環とガラシャの姿を見つめながら、これからもこの笑顔を守り続けようと誓う明影へと、彼のお姫様が言う。


「さあ、ぼくを楽しませろよ、こたりょ~! 言っとくけど、逃げることなんて許さないからな! お前は一生だめ忍者としてぼくに仕えるんだぞ! わかってるよな?」


 どうやら彼女の方も、自分と過ごす日々に満足してくれているようだ。

 気持ちが一つになっていることを喜びながら、明影は嵐魔琥太郎として彼女の言葉にいつも通りに応える。


「もちろんでござる! 全ては、姫の仰せのままに!」


「にゃっはっはっはっは! いいぞ、こたりょ~! それでこそぼくの大好きな、愛すべきだめ忍者だ!」


 ……一年で三十万人突破という、分不相応な目標を立てた自分がこんなことを考えるのは間違っているのかもしれない。

 だが、許されるのならば……これからもゆっくり、二人で、この道を歩んでいきたいと思う。


 手を取り合って、過酷でも楽しい道を共に歩む未来を想像しながら、明影は今、この瞬間を確かに幸せに思い、笑みを浮かべるのであった。


―――――――――――――――


ここまでお話を読み進めてくださってありがとうございます。

【忍者と姫はVtuber!】一旦の区切りとなります。


中盤で雰囲気が変わってしまって、胸糞シリアス展開が入ったせいで嫌な思いをさせてしまい申し訳ありません。

お話を作る時に下げる展開にしてしまうのは自分の悪い癖だな~と思いつつ、ただ配信を続けるだけだとそれこそ現実のVtuberさんを見ればいいだけだしな~とも思ってしまうのでどうしてもストーリーを作りたくって……というのは言い訳ですね、すいません。


一応、続きを書けるようにはしているのですが、カクヨムコン開催中にどうにかもう一本お話を投稿したいので、少しこちらは放置します。

折を見てまた書いていくつもりので、気に入った方はブクマして気長に続きを待ってくださると嬉しいです。


改めて、ここまで読んでくださってありがとうございました!

良ければ別の小説も読んでやってください!

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忍者と姫はVtuber!~助けたぼくっ子不思議ちゃん系美少女にめちゃくちゃ懐かれてる件について~ 烏丸英 @karasuma-ei

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