【3ワード企画】クランプス

うつりと

寝手場架莉

【3ワード企画】

 うつりとメンバーで、3つのワードを出し、即興で短編小説を書きました。

 ・クリスマス

 ・交差点

 ・下級生


ーーーーーーーーーー ここから作品 ーーーーーーーーーー



「クランプス」


「え、クリスマスなのに会わないって、ありえないでしょ」

 二学期が始まった頃から付き合い始めたいっこ下のドイツ人ミックスのアーダが拗ねる。

「25日に模試なんだから、しょーがないじゃん。俺、中三だから」

「そういうことじゃない」

「そういうことだよ」

 彼女はとても気が強く、年上だろうが教師だろうが媚びることはない。

 それなのに意外にも彼女の方から告ってきた。それまで話したことはなかったけど、その場でオッケーした。

 僕は彼女の見た目が好き。ただそれだけ。

 明るい髪色、薄茶の瞳、雪よりも白い肌。それを同級生たちに自慢したい。

 それだけ。

 どうせ春に卒業すれば別れるんだし、下級生と付き合うなんてそんなもん。

「ニコ」

「なに」

「いつもの交差点でプレゼント持って待ってる」

 あと何回一緒に帰れるかわからない帰り道、無印良品のベンチでアーダはそう言った。

「ごめん」

 僕はそれしか言えなかった。


 12月24日

 明日の青山学院大学での模試を控え、五時間も勉強してしまった。前回の模試で志望校の合格率が65%と低かったので、ここで結果を出すしかない。

 スマホにはアーダからの連絡はなかった。

 17:25

 なんだか急にアーダに会いたくなった。

「ちょっとコンビニ行ってくる」

 母親にそう言い残し、僕はダッフルコートを着て玄関を出る。

 さほど大きな街ってわけじゃないけど。駅に近づくにつれてイルミネーションが増える。光に群がる人たち。

 つまらない受験勉強、それを強いる親、狭い部屋、こっそり観る面白くない動画。そんなものよりかはずいぶんこのキラキラした灯りはマシだ。

 そしてその灯りより、アーダはもっとマシかもしれない。

 今までで一番会いたい。

 いつの間にか駆け足になり、人ごみをかき分けながら、いつも待ち合わせする交差点に向かう。

 交差点の角に寒そうな薄くて真っ黒な服を着て立つアーダ。

 クリスマスにぴったりな白い肌。

「やっぱここに居たのか。ごめんね」

 アーダがとびきりの笑顔で、なにかを掲げた。


 僕の母親の首


「え……」

「お前の母親の味を教えてやろうか」

 美少女のアーダが男の声で、意味のわからないことを言う。

 掲げた首は目を見開き、首から真っ赤に染まった脛骨がぶら下がっている。

 行き交う人々はそれに気づかない。

 本物かどうかわからないし、母親が殺されてもそんなに悲しくもない。

 それでもアーダがそんなことするってことが理解できない。

「え、な、なんで。どういうこと」

「夏にお前たちがしたことを思いだせ」

 夏。

 僕と同級生二人で、アーダのクラスの女子を【からかった】。

 そしたらその女子は夏休みに電車に飛び込んでしまった。

 そう言えばアーダが告ってきたのは九月。

「もしかして、僕ら三人に復讐ってこと?」

 アーダは母親の首を交差点に投げ捨てる。


「メリークリスマス」


 最後に僕が見たのは、アーダが鎌で僕の首をはねる瞬間だった。

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【3ワード企画】クランプス うつりと @hottori

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