ダンジョンがある日常。1人の男は探索者デビューを決意した。
がらんとした自宅マンションのリビングで俺は、否応なく買ったばかりの真新しい1人掛けソファの背凭れに身体ごと...いや、やっと終わった面倒事もひっくるめて一旦預けてしまえ、とばかりにグググッと背中を押し当てた。
仰いだ天井には、星の形をした蛍光シールが光る訳も無く、俺を見ている。
俺は三度〈みたび〉、独りぼっちとなった。
親と。
家族同然の姉と。
そして、妻と...いや、もう元妻か。
ここまでくると独りぼっちの星の下に生まれたのかもな、なんて蛍光シールのお星様に八つ当たりしてみたら、無意識のうちに溜め息が出る。
三度目の別れは離婚だ。
しかも、浮気だった。
相手の間男はC級ダンジョン探索者で、俺が昼間働いている間に元妻の攻略にも励んだらしい。...阿呆か。
「子供が出来たの...」
「アナタの子じゃないわ」
「....離婚しましょう」
だと。
淡々とした元妻のつまらなさそうな表情が、ただただ、印象的だった。
1年の結婚生活もその内半年間は不貞で裏切られていて、残りの内3ヶ月は離婚協議に費やした。
そんな長かった話し合いも漸く終わった。
ソファから立ち上がって、ベランダに出て煙草を咥えて火を点けた俺は、しっかり吸ってから空に向かって紫煙を吐き出す。
「あぁ〜、やっと終わったなぁ〜」
さて、明日からどうしよう?
とりあえず『ヘローワークで失業保険手続きするか』と向かった先で....
優しくて、ちょっぴり不器用な男に起きるドタバタ人生譚〈ファンタジー〉の始まり、はじまり。
[ピコン!《この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在のものとはいっさい関係ありません。》です]