第82話

 めんどくさい童貞、工事する。


 もうね、森を切り開くにも、汚染から生まれた不気味生物だらけで限界がある。

 現地生物の駆逐は法律違反。

 それよりも高確率で志乃ちゃんに怒られる。

 だから地下道を拡張した。

 我々の工事技術なら地下水の漏水がないところまで工事できる。

 危険生物は志乃ちゃんに渡して、あとは漏水がないところまで補修。

 さらに地下道を拡張。

 安全に通行できるようにした。

 シールドマシンを使ってもいいが、最早時間はかけられない。

 俺の幸せ生活のために!!!


「波ーッ!!!」


 かめはめとかどどんとか言われてはいるが、資料が散逸していて本当の名前はわからない。

 呼吸から丹田に気をため手から放出する。

 惑星日本の幼稚園。

 そこのお遊戯会で教わる技だ。

 習得できなければ人間とは認められない。

 かつて日本人なら誰でも出来たと言われる基本技である。

 それで地下を貫通させる。

 もちろん途中で曲げることも可能。

 だが威力が高すぎて戦闘には不向き。

 兵士をそろえてパルスライフル持たせた方が安い。

 都市ごと破壊するからな。

 ぶっちゃけ宇宙戦艦相手や土木工事にしか使わない。

 だから工事には使う!!!

 ビーム的な気が地下を掘り進む。

 残った人型労働生物ごとな。

 くいっと途中で指を上げれば出口も確保だ。


「ヒャッハー!!!」


 穴を開けたらあとは工事ドローンにお願いする。

 今なら嫁軍団にドローンオペレーターもいるし。

 あとは整えてもらえば終わり。


「相変らずデタラメっすね。惑星日本の日本人」


 アイスを食べながらセレナがほざく。

 食べ方エロいぞ。ペロペロすんな!

 狙いすぎてて逆にスンってなるわ。


「でもその分工期は短くなりますからいいんじゃないですか?」


 こっちは普通にエロい。

 くっころちゃんは自分がエロいことを自覚してない。

 だから逆にエロい説を推したい。

 普通にアイス食ってるだけでエロい。


「ふむ、マコト殿がいれば工事がやり放題なのか」


 こちらは最近だいぶ嫁たちに毒されてきたシャルロットちゃん。

 アイスを食うその姿。

 マーベラス!!!

 色気が皆無なのが逆にいい!!!

 わかるか!

 これが俺の求めていたものだ!!!

 するとセレナが俺のところに来て俺を蹴る。

 ぐはははははは!

 きーかーぬーわー!!!


「お兄ちゃんさあ! せっかくうちがサービスしてんのに! 何その顔!?」


「黙れ! 貴様は狙いすぎてまったくエロくないのだ!」


「AIが選ぶ……最高にエロい仕草が……エロくない……だと……」


「エロくないね!!! 貴様の狙ったエロ! それは我々日本人が数千年前にすでに通った道だ!!! 貴様はなぜ無自覚ボーイッシュ幼馴染みが男の子の心を鷲づかみにするかを考えろ!!!」


「な、なんだと!!!」


「貴様の仕草は筋肉タイツヒーロー時空のケツアゴに有効な手段!!! 高度に訓練された日本人には効かぬわ!!!」


「でもお兄ちゃん! パツキン好きじゃん! 端末のアクセス履歴に【惑星ナンパ隊】シリーズが……」


「キシャアアアアアアアッ!!! そういうところだぞ!!! 貴様らはわかってない!!! 人の心がわかってない!!! たまには人妻もの。たまには惑星ナンパ遠征もの。たまには地味子もの。そして企画ものはデザートだ!!!」


「性癖の歪みがすごいよお兄ちゃん!!!」


 最低の会話を繰り広げる俺たち。

 もうね、セレナとはガチンコよ。


「マコト殿はよりどりみどりだぞ。いまや国中の美姫憧れの存在だ」


「シャルロットちゃんもね」


 白い歯キラーン。


「あ、ああ……うん」


 シャルロットちゃんは照れて下を向いた。

 セレナこれ!!! こういうのが俺の欲しいものなんじゃい!!!

 貴様はわかってない!!!

 俺はこういうシチュエーションのためなら悪魔に魂だって売ってくれる!!!


「マコトさんはラブコメがしたいんですね」


 さすが、くっころちゃん!!!

 最年長はわかってる!!!


「んだんだ」


「ぐッ! めんどくさいなこの童貞!!!」


「うるしぇー!!!」


 俺は絶対に自分を曲げない。

 たとえ爛れたハーレムが目前にあろうとも。

 そう、シャルロットちゃんとのフラグだけは絶対に折らない!!!

 こうしていつもの不毛な口喧嘩をして数日。

 とうとう完成した。


「完成しました」


 嫁の土木部隊も一押しである。

 研究所やプラントを完全破壊して入り口出口を完備。

 馬車も入れる仕様。

 フンコロガシ型ロボットで馬の生産物というかウンコも即時に掃除。

 新たなプラントで生ゴミと一緒に発酵させて肥料を生産。

 その際に発生したガスは燃料として回収。

 肥料で食料を現地生産っと。

 これで窒素はなんとかなる。

 ウンコ大事。

 カリウムは下水とか薪の残骸から。

 人間が生活すれば発生するから問題なし。

 リンだけ入手せねば。

 あくまで俺たちが肥料を生産していることが重要なのだ。

 化学肥料は宇宙から持ってくる。

 あとは嫁たちに論文を書いてもらって農学を発展させる予定だ。

 自分たちの子どもの世代には共和国の現代水準の生活をしてもらう予定だ。

 だって嫌じゃん。中世の生活。

 俺耐えられないよ。

 アイスすらないし。


「マコト殿がいなくなったらこういう贅沢もできぬのだな……」


「いなくならないよ。俺たちだって行くとこないし」


 行くところ……たしかに宇宙に拠点を作れば可能だろう。

 材料は大量に落ちてる。

 でも大地があるところで暮らすのは、俺たちからすれば贅沢である。

 ひどいのになると宇宙しか知らないのもいたわけで。

 惑星日本は子どもを兵士に育成する惑星だ。

 退役軍人と子どもしかいない。

 俺も工兵の訓練過程が始まってからはずっと宇宙だ。

 嫁たちも体を持ったのが宇宙だ。

 宇宙しか知らない。

 畑を持って田舎暮らしとか一部の特権階級のものだ。

 まさかシャルロットちゃんはそれが贅沢だなんて思いもしないだろうが。


「ずっといるよ」


 っていうか絶対出て行かない!

 追い出されてもしがみついてくれる!!!

 そう、それが俺たちの一致した考えだ。

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惑星国家最後の生き残りは外に出したらだめなやつでした 藤原ゴンザレス @hujigon

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