きっときみも好きなうた

pico

Track01『one more time,one more chance』山崎まさよし




 人生を変えた曲。


 この曲との出会いは、新海誠監督の映画『秒速5センチメートル』でした。なんとなく行く先に迷っていて、自分も、周囲も、どうにもならないもやもやの中にいた時にこの映画に出会いました。

 正直なところ、別に映画の内容にひどく心を動かされたというほどではありません。ただ、新海監督の原点に近い作品であることは間違いなく、新海作品の中でこの映画に最初に出会えたことを私は心から幸福だと思っています。この映画を知る前と知った後とでは、この先の新海作品の見方が大きく変わるだろうと思うからです。


 話が逸れました。とにかく私はこの映画の中で、この歌に出会いました。つまり、新海監督のあの美しい描写、背景、言葉にまみれながら、初めてこの歌を聴いたのです。心が動かされないはずがありません。言ってしまえば、新海監督はこの歌のためにこの映画を作ったと言っても過言ではないのです。そうでなければ、この歌にあれほどマッチした物語を創ることなどできません。

 もう一度言いますが、私は別に新海誠信者ではありません。トークイベントに参加したこともありますが、決して信者ではありません。彼の書くストーリーは、おおっぴらに「好き」と言うにはなんだか気恥ずかしいからです。『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速センチメートル』に一貫して言えることですが、なんだか中二病っぽいというか、抑鬱した男性の想いとか、理想の女性像とかそういうのが見え隠れしていて、あまり大きな声で「好き」と言いたくないのです。私は新海誠作品に大きく影響を受けていると自覚しているので、矛盾だらけのことを言っているという自負もあります。つまり「好きだけど好きって言えない」という思春期の男子みたいなこじらせた感情を抱いているわけです。

 しかし、胸を張って言えるのは新海誠監督の描く『背景美術』は間違いなく世界一であるということです。もはや背景だけでいいんじゃないかと思ったこともありました。本物の写真よりも動画よりも美しい背景画があるとは、思いもしませんでした。私はジブリ映画も心底愛していますが、背景画という限定されたジャンルとはいえ宮崎駿監督を越えるアニメ映画監督が現れるとは誰が想像できたでしょうか。


 また話が逸れました。とにかく、新海誠監督の尊敬すべき背景美術で満たしつくされた映像とともに『one more time,one more chance』を初めて聴き、雷に打たれたような心境だったわけです。

 ただただこの曲が好きで、何度もループして聴きました。とにかく、歌詞が素晴らしい。『これ以上なにを失えば』『次の場所を選べない』『こんなとこにいるはずもないのに』『星が落ちそうな夜だから』…あぁ、こうして言葉を並べるだけで胸が痛くなる。こんな美しい恋をしたことはないけれど、こんな風に人を想えることがひたすらに美しくて。私はこんな物語を描きたいと、いつもいつも思いながら小説を書いています。


 その後偶然にも付き合っていた恋人から、山崎まさよしのライブに誘われました。正直言って、私たちの世代の歌手ではありません。ライブで周りを見ても、だいぶ年上のお姉さま方ばかりです。私はただただ、『one more time,one more chance』を聴きたいという想いでライブについて行き、当然のことながら初めての生の『one more time,one more chance』に感涙することとなります。まさかその恋人と後に結婚することになるとは思いもしませんでしたが、それはどうでもいい話です。

 それから何度も山崎まさよしのライブに足を運びました。…というのは言いすぎですが、数年に一度行ったとしても大抵この曲を歌ってくれるので、それだけで胸がいっぱいになります。なんなら、山崎まさよしの所属するオフィスオーガスタのフェス「オーガスタキャンプ」に行けば、野外でいい感じに『one more time,one more chance』が聴けます。いつ聴いても満たされます。この曲を聴くためだけに行ってもいいと思えるくらいに、満たされます。(スキマスイッチ、秦基博など他にも素晴らしいアーティストが多数出演する神がかったフェスです)

 もちろん、この曲以外にも素晴らしい曲がたくさんあります。山崎まさよし本人のピアノ演奏で聴いた『ツバメ』、ドラえもん映画の主題歌になった『空へ』、ゆるくてやさしい『セロリ』。ガチのファンの方からすればにわかもにわかですが、世代が違ってもこんなに素敵なアーティストがいることを教えてくれた今の旦那には、その点においては感謝しています。




 この歌について語ってくれる方、ぜひコメントをください。皆さまの熱い想いを聞かせてほしいです。

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