エピローグ

エピローグ

 二千二百五十三年。俺は七十一歳の誕生日を迎えた。世界は巻き戻ることなく、未来へと続いている。


 リウァインダーとの戦いからいろんなことがあったものだ。


 俺が完義さだよしと戦った後、政府の特殊部隊は次々とリウァインダーの拠点を制圧していき、半年もしない内にリウァインダーは壊滅した。やはり戦闘用アンドロイドの工場を制圧したことが決定打となったようだ。


 それから【タイムバリスタ計画】はレジスタンスに妨害されることなく順調に進み、ブレーンを無力化することに成功した。ひとまずは二千二百五十二年の【巻き戻り】は回避することができたけど、再び同じような現象が起きないとも限らない。【巻き戻り】に関する研究は今でも行われている。


 それからは【巻き戻り】が公表される前のように、子供を作り、未来を次の世代に繋げられるような世界に戻っていった。


 俺は舞と結婚して、二人の子供を授かった。結局、俺の子供は二人ともアクション俳優になってくれなかったけど、不思議と寂しくはなかった。


 俺の子供以外にアクションスターとしての俺の意志を受け継ごうとしてくれる人はいるし、そうでなくても、俺の子供達は違う道で未来への進化を目指してくれている。それならば俺としては何の文句もない。むしろ子供達が誇らしい。


 四十八歳になった時、完義が出所した。刑務所の中では模範囚であったようで、閑嵐流を他の囚人達に教えたりして、囚人でありながら、囚人の更生に一役買っていたそうだ。さすがは俺の親友だ。


 それから二年後、俺と完義は約束通りにアクション映画を撮った。俺が監督兼主演で、完義が敵役だ。お互いに五十歳といっても体力はあまり衰えておらず、年甲斐もなくいろんなアクションに挑戦したものだ。無茶をし過ぎて二人とも舞に怒られてしまった時はさすがに反省した。


 元リウァインダーの完義がいることで多くの批判が集まるかと心配していたけどそういうこともなく、むしろたくさんの子供に喜んでもらえた。やはり俺としても実際の戦いよりも、演技の戦いの方が楽しかった。


 そして七十一歳になった今、俳優は引退したけど、監督としてアクション映画の製作に取り組んでいる。


 撮影前に長女の文香ふみかが話しかけてくる。


「お父さん。脚本通りにちゃんと進めてね」

「ああ。もちろんだ」


 文香は脚本家の道を進んだ。映画やドラマやゲームといった数多くのジャンルでシナリオを手掛けている。また、小説を復活させようとするプロジェクトを立ち上げ、話題を呼んでいる。文後ぶんごが諦めたことを代わりに果たしてくれるかもしれない。


 それから長男の飛成ひなりもこちらに来た。


「父さん。アンドロイドの調整、ばっちりだよ」

「分かった。そろそろ始めよう」


 飛成はアンドロイドの研究者として活躍している。こうして撮影用のアンドロイドを調整してくれることもある。飛成もアンドロイドの技術の発展に大きく貢献しているようで、もしかしたら留成ひさなりをも超える研究者になるかもしれない。


「やっと出番か。待ちくたびれたよ。親父。じいちゃん」


 一人の少年が元気よく腕を回している。飛成の子供で、俺の孫である永義ながよしだ。彼がアクションスターとしての俺の意志を引き継いでくれた。完義のファンでもあるらしく、閑嵐流を取り入れつつ、独自のアクションを日々実践している。俺や完義の時代なんてとっくに終わったようで、俺や完義はむしろ安心している。


 これから世界はさらに進化を遂げるだろう。新たな文化が広まり、新たな文明が作られ、新たな英雄が生まれる。


 その一歩となるためにも、俺はメガホンを取る。


 今日も絶好のアクション日和だ。


「アクション」

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リカーシブ・ラストスター 荒ヶ崎初爪 @hatsumeTypeB

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