空港の小人
作島者将
空港の小人
夜、突然大きな物音がして家から出てみたら、そこには空港に突き刺さった飛行機があった。
飛行機からはごうごうと炎が出ていて、10時間かけてようやく消火が完了した。この事故でたくさんの犠牲者が出た。今から話す、とある変わった家族も犠牲者の一人だ。
この空港の地下には人間に見つからないようにひそかに暮らすとても小さな小人の町があった。まずはマーク・エルソン。この町に暮らす住人の一人。そしてその妻ローズ・エルソン。マークの妻であり、この町で唯一の美女。そして二人の子供レイア・エルソンとダグラス・エルソン。ここでたった二人だけの子供。
他にもマークの親友クレント・ペリエス、レイト・クラッチ
彼らは今日も幸せな生活を送っていた。
あの事故さえなければ…
20XX年11月x日悲劇は起きた。
その小人の町に大型旅客機が突っ込んできた。一瞬にして小人族が発展させてきた町は焦土と化し、マークの家族、親友、町民は全滅した。
その頃マークは空港の裏山に暮らす小人の村人に蒸気機関の仕組み、人工太陽(豆電球)の作り方を教えに行っているところだった。突然煙を出しながら落ちてくる飛行機を見た。そして声を出す間もくれず飛行機は小人の町に落ちた。
マークの全てが消えた瞬間だった。
それから3年がたち、空港は封鎖され、マークは一人で町民の墓を作り、毎日欠かさず墓参りをしていた。特に親友と家族の墓は念入りに手入れを行っていた。
今いる彼の唯一の友達は鳩のクルークだけだった。
マーク:「あの日からもう3年か…」
クルーク:「そうだな…」
マーク:「あの時、こうなることを知っていればこんなことには...あぁもういっそのこと死にたいなぁ...」
クルーク:「前から言ってるだろ?死んでった人の分もお前が生きなくちゃいけないって。」
マーク:「クルーク、家族の死が、親友の死が、どれだけつらいものか、苦しいものかお前にはわからないんだろうな。」
クルーク:「分からない、だけどこれだけは言うことができる。『生きている限り、いつまでも道は続いていく』と。俺はもう帰る。元気でな。」
マーク:「お前もな。」
マークの目には涙が夕日を反射して輝いていた。
マークはいつも願っている。
「あの日々にいつの日か戻れますように」と。
その後彼は3年ぶりに裏山へ行き、飛行機が突き刺さったままの空港を眺めた。彼の体に木漏れ日がさしていて、空港の近くの町では救急車が走っていた。彼の泣く顔はまるでふざけて作ったモンタージュ写真のようにくしゃくしゃになっていた。少しするとマークは空港へ戻り、再び墓参りをした。
ローズ:「この先で待っているよ。」
マーク:「ローズ、君なのか?今、会いに行くよ...会いに、行く...」
気づくと彼は布団に横たわっていた。布団から起き上がるといつも家族とのやり取りが脳裏に浮かんでくる。
ローズ:「ほらレイア!ダグラス!早く起きなさい!学校に遅刻しちゃうよ!」
マーク:「僕の寝坊が遺伝したのか?」
ローズ:「そうらしいね。」
レイア:「おはよう!」
マーク:「おはよう!元気だな!ダグラスは?」
レイア:「まだ寝てるよ?」
マーク:「そうか。よし!レイア!ダグラスを起こしてこーい!」
彼は昔の記憶に思いをはせながらラジオをつけた
「政府は1年後に飛行機墜落事件の空港の解体を決定いたしました。」
マークはしばらく放心状態になり、考えた。
マーク:「どうせ解体されるならせめてこの町を綺麗な花で埋め尽くしてあげよう。」と。
もうおやすみ。親友よ。
それから彼は町に千日紅の種をまき、四六時中ずっと寝る間も惜しみ花の手入れをした。どうか安らかな夢で眠れますようにと唱えながら。
飛行機は飛んでいないのに自動放送システムだけが永遠に流れている。クルークの言ったことは本当だったのかもしれない。
僕はまだ悪い夢でも見ているのだろうか。夢の中みたいだ。
泥濘に落ちていくように僕は花に水をやる。自分で作った味のしないビーフシチューを食べる。帰ってくるはずもない手紙の返事を待つ。それが僕の生活のルーティンになっていた。
彼が作った墓は見事な千日紅の花畑になっていた。
次の日、解体工事の下見に来た工事士達の1人が空港に開いていた穴を見つけた。
彼が穴を覗くと小人が1人、花畑で死んでいた。彼は小人の巣を埋めてあげてその場を去った。
結局、空港が歴史的遺産に認定されたため解体工事は行われなかった。今もなお、その空港にはたくさんの小人たちの魂が眠っている。
終わり
空港の小人 作島者将 @saku-1
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