12.オーク狩り
残念ながら俺が頻繁にやっていたネトゲは無期限の休止状態になっていた。
ゲームの運営は日本企業だったはずだが、本社は東京だ。
東京もモンスターによって壊滅的な被害を被っていたのだからゲームがやっていないのは仕方がねえな。
ようやく物々交換から現金が復旧してきた段階で娯楽を望むのはさすがに贅沢がすぎるか。
やることもないので毎日上空から重たい物を落としてゴブリン狩りの毎日だ。
粘魚を通しての狩りも毎日やっていれば慣れたもので、狙いを外すこともほとんど無くなった。
遠隔での狩りに加えてモンスターは生物と非生物を見分けることができるらしく粘魚に興味を示すことも無いのでレベリングによるリスクもほとんど無い。
低リスクでモンスターを狩ることができるのならば、どんどん格上に挑んでいける。
どれだけ強いモンスターを倒しても魔力値が倍々で増えていくようなことは起こらないらしいのでジャイアントキリングにはそれほど意味はないが、常に格上を狩り続けることで魔力値の上昇スピードが早くなるということはある。
上空からの狩りにも慣れてきたことだし、ゴブリンはそろそろ卒業だ。
今日は少し格上を狙ってみるかな。
【鑑定】という他人のステータスを見ることができるスキル持ちによればモンスターにも魔力値があり、ゴブリンやコボルトは大体10~20前後だという。
この街に出没するゴブリンやコボルトはさすがにもうちょっと上だろう。
魔力値は格下を倒してもほとんど上がらない。
俺の魔力値は毎日ゴブリンを倒し続けて40まではすんなり上がったので、多分そのくらいがこの街のゴブリンの魔力値だろう。
対してこれから狩ろうとしているオークというモンスターは通常でも魔力値は50を超える。
この街の奴は体格もネットの情報よりデカいし、装備も良い。
おそらくゴブリンと同じように通常よりも魔力値の高い強オークだろう。
こいつらも1匹で行動していることはまずない。
軍隊のような集団行動をしているのが厄介だな。
とりあえず扉落としてみるか。
俺は粘魚を飛ばしてオークを探した。
オークのコロニーは元中学校の校舎だ。
コロニーというかもはや砦だ。
街中から集められたガードレールやら電柱、自動販売機などを組み合わせて防壁のようなものを作り上げている。
このあたりはモンスター激戦区なので、屈強なオークであっても守りを固めないと住めないということか。
オークのコロニーの近くには生きた森と呼ばれる植物型モンスターが作った森がある。
規模としては森というよりも林なのだが、とにかく植物の生育速度が異常なのでネット上では森と呼ばれている。
通称トレントと呼ばれている樹木型モンスターの周辺は、普通の植物であってもにょきにょきとあっという間に成長する。
そうしてコンクリートジャングルを緑で浸食し、草食動物型のモンスターの餌場になるように本物のジャングルに変えてしまうのだ。
草を食べに草食動物型モンスターがのこのこ寄ってこれば、そいつを自在に動く触手のような根っこで絡め取って直接養分にしてしまう恐ろしいモンスターだ。
こいつがダンジョンから出てきた街は時間と共に自然に飲み込まれていくという。
地球環境にとってはどっちが敵でどっちが味方かわからんが、人類にとっては明確な敵だ。
このトレントがモンスターの生態系の根底を支えている存在と言っても過言ではない。
牛型や羊型のモンスターは普通の牛や羊の数倍の大きさがあるので、食べる草の量も尋常じゃない。
トレントの近くの異常成長する植物じゃないと、草食動物型モンスターはあっという間に飢えてしまうのだ。
だからトレントが作り出す生きた森の近くには草食動物型モンスターが集まっており、それを狩る狼型モンスターの群れやオークのコロニーも森の近くに集中している。
このへんはトレントのせいで大分景観が変わって、もはや元の街の面影も無いな。
文明崩壊後1000年くらい経って完全に自然に飲み込まれた世界みたいだ。
ダンジョンが出来る前の食料なんかが残っている可能性は低そうだが、逆に野生化した果樹や野菜がありそうだ。
今度暇なときに森の中も探索してみるか。
とりあえず今は肉が食いたいのでオークを優先する。
オークの肉は食える。
最近の異世界ラノベではオークの肉は美味いというのは常識だが、現実世界で最初に食ってみたやつはどういう神経してんだろうな。
なんにせよ大変美味い肉だったそうなので俺も食ってみたい。
オークの砦は定期的にトレントを倒して森の浸食を防いでいるのか、まだ少し文明を感じるような気がする。
砦の防壁に使われている自動販売機とか、意味わかってなさそうだから中に飲み物がまだ残っているかもな。
俺は粘魚をメダカサイズまで分裂させ、自販機の中に入り込ませた。
このサイズまで分裂させてしまうと小さすぎて体内に脳を生成することができないので動きに支障が出る。
だから普段はあまりやらないのだが、こういう狭い場所の探索には便利だ。
粘魚は赤い目玉以外は粘液のように不定形になれるので、メダカサイズの目玉が通れる場所なら入り込むことができる。
タコみたいだな。
自販機の中には案の定飲み物が入ったままになっていたのでついでに頂いていく。
メダカサイズの口では飲み込めそうにないので、何匹か合体させて金魚サイズにしてから1本ずつ飲み物を飲み込んでいった。
意外と賞味期限が残り少ないのが多いが、賞味期限と消費期限は違うのでちょっとぐらいは過ぎても大丈夫だろう。
会社勤めしてた頃とかは格好つけてブラックのコーヒーを飲んでいたが、実は甘いコーヒーとか大好きなんだよな。
寝て起きたら世界がおかしくなっていた 兎屋亀吉 @k_usagiya
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