六章 : 緋空の霧
何もかもジリ貧だった。
しかし変数は確かに加わっていた。
路線は変わる、
「なんだ!? 山が崩れるぞ......!!」「みんなッもっと離れろ!」「姫はどうした!」「まだあの中で......ってなにィッ!?」
再生した大地に亀裂が走る。
亀裂からは蒼い粒子が溢れ出す。
今、この国の分岐器が切り替えられる。
バグゥっ! バフっ!!
土が大きな音を立て弾け飛ぶ。
そして響くのは8音で構成された音階。
ツェーデーエーエフゲーアーハーツェー......
音を響かせ大地を揺るがし、姿を現すは......。
『司令長官殿! 奴等、何か隠していたようです!』
『どういうことだ?』
奪った双眼鏡を覗くと......
そこには。
『なんなんだあれはッ!?』
「ガリウ王! 埋められたハズの造船所が崩壊を始めています!」
「なんだと!? 敵の弾が掠ったか!?」
「いえ、違います......、崩壊は内部からです!」
「どういうことだ! 」
一人、階段を登り地上に出ると......
そこには......
「......やるのなら、やり遂げろよ?」
「発進......!」
再び音階を奏で、臨界のその先へ......。
その黒金の
「もう近づかせない......!!」
叫びに呼応してか艦の側面のダクトから
大量の龍子が放出される。
その龍子は大きく広がると......
翼の形を取った。
神々しさ。
そしてバルパスバウが引くように開くと、
口の中から円筒状のユニットが姿を現す。
ヒトは未知を怖がる。
それを越える勇気を出すには、
その未知を越えるなにかが必要である。
モーニングコートを着た代表は
直ぐにその行動に移るよう促した。
しかしそれが笑っているように
見えてしまったが為に、そして
その絶対感に呑まれてしまったが為に、
彼は苛立ちを覚えた。
『神気取りか!? 堕とせ! アレを! 潮臭く汚い大地に叩きつけろ!」
シルクハットを投げ捨て声を荒らげる。
『了解......!』『未確認飛行物に攻撃を集中させろ!』『射角調整! 発射!』
どごごっごごおおごごごご!!
地鳴りのように、
とてつもない音を立てながら
突如現れた飛行物に攻撃を加える。
.........が、
『直撃のはずだ!』
護るという意思に呼応して、
口の中のユニットから展開された盾。
その盾は、霧のように透けているのに
それでいて先が見えない。
後にこれが由来でこの艦は
【ネーベル】
と呼ばれる事になる。
「......ヨーソロー」
[[了解]]
後のネーベルは、
深い深い龍子の霧に包む。
一定の高度を保ちながらゆっくりと進み出す。
『魔導砲! 1から50! てぇーっ!』
かつて軽々と国を焼き散らした極太の
魔力によるビームの線は
その霧に入った瞬間、
ぽひゅん......と情けない音を立てて消え失せる。
『なんなんだアレは、情報にないぞ......!』『なんてもの用意してたんだ......! ってうわ!』
グォヒュゥゥーンッ!!!!!!
ネーベルの2連装の主砲から放たれたビームは
近くにあった山を消し飛ばす。
誰にも当たってはいないが
絶望を装うのには十分すぎたのだ。
『ただの砲塔じゃないのか?』『ビーム、撃てるのか? しかも一方的にじゃないか......! 卑怯なッ!』『蒼い......、綺麗な......』『お、俺は逃げる! 勝てる訳ない!』『ま、待て! 俺も......!』
ゆっくり進んでいた大群が足を止める。
得体の知れない怪物の圧に
引き返す者も現れ、
その戦線は落とした絹豆腐のように、
簡単に、一息に崩れ始めた。
『くそッ! 戻ってくるな! アレを堕とせよ! あんなちっぽけな国のハリボテに惑わされて......!』
ネーベルは国の代表、
モーニングコート男の乗る大型飛空挺の
眼前まで迫っていた。
そんな大型飛空挺も
ネーベルからしたらちっぽけだった。
象を鯨が睨みつけるように......。
その海獣の鼻先に、
オープン設定にした
艦内無線のマイクを片手に持った少女......。
「えぇー{キィーン......}
......ありがと。
はい。
どうも、
私が、
"ちっぽけ"な国の、
"でっかい"国王の、
"ちっぽけ"な娘の、
アルニ"様"です。
この度はおいでくださり、
ありがとうございました。
長旅おつかれ様でしょうか?
それとも楽しんでいるでしょうか?
えぇー......私、いや、我が国から
あなた方に"要望"......、”命令”?があります。
簡単なことです。
ど う ぞ! おかえりクダサイ!
それと、もひとつ......。
一生、私たちに喧嘩を売るなッ!
...ふぅ。以上ですワ。」
腰を抜かしたモーニングコート男は
汗だくでその立派なコートも
ぐしょ濡れになっていた。
この際この男を地の文では、
腰抜けぐしょ濡れ男にでも改称するとする。
『ふ、っふぁけるな!! そんなもんもつてきったとっことで!!?? 負けはせ、でぬにょ???』
「あ?」
ドスのような目線に耐えかね、
腰抜けぐしょ濡れ男は
逃げるように飛空挺の室内に入っていった。
「そういうことです。」
その日のうちに条約が結ばれる。
ガリウの国、{トゥマーヤ}と言うのだが...
相手方はトゥマーヤへの侵略を
未来永劫一切許さず、その上賠償金を
トゥマーヤにたっぷり支払う事で可決した。
5年後、
古代調査財団
Gaia:Usher-Invent-Legacy-Decipher...
略称名"ギルド"が発足。
そのギルドの調査団が来国。
ネーベルの心臓、
宝箱を研究名目として現れたが。
恐らく実際は軍事利用だろう。
しかし、その頃にはもう、
そこに船は無かった。
「アルニ、お前はその船......ネーベルだったかな? と共にこの国を出るんだ。余りにも大きすぎる力だった......。その内、力を欲しがる
[[EXT]]
緋空の霧 のつなよ.exe @notunayo-exe
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