ゼルトナードッグ

KOSE MIYANO2005

第1話


 

 細長く薄暗い通路、ジメジメと湿った空気と汗臭い臭いが充満している。



 その道を一つの影が歩いていた。壁に映し出された影はまるでオオカミのような獣の姿をしていた。

 さらし出された筋肉質な上半身は、漆黒な長毛と白い被毛で覆われ、その右脇腹には一直線に伸びる傷跡があった。

 ボロボロになったズボンと腰の間から生えた黒色の毛で覆われた尻尾を振るい、顔面には前に突出した鼻口部、その口元には先端が鋭く尖った犬歯を生やしていた。

 しかしオオカミとしてはマズルが短かく、黒く垂れた耳。その容姿はオオカミと言うよりかは犬、大型犬の亜人であった。

 両手の握られた拳、その掌球と指球の間に薄茶色に汚れた白い布を巻いていた。

 やがて通路を抜けると、オレンジ色の照明で照らされた会場、木製で出来た地下闘技場の円形のリングがあり、外側はリングの円を沿うように多数の観客が張り詰めていた。、クリス・ケルベは、そのリングに上がった。

 するとリングの円を沿うように外側に張り詰めた多数の観客からの歓声が会場内に響き渡る。しかしその歓声はクリスに対してでは無く、後から入ってきたに対してだった。

 肌黒くスキンヘッド、六つに割れた腹筋と筋肉質な太くたくましい腕、クリスよりも身長が高く大柄な男だった。男はこちらを睨みつける、その瞳は何人も人を殺めた極悪な犯罪者のようにも見えた。

 すると男はフッと鼻で嘲笑った。睨み合いながら両者は拳を構えた。

 カーンっと高い音でコングが鳴り響いた。決闘の合図だ。

 先に仕掛けたのは人間の方だった、前に構えた左拳を突き出した。顔面目掛け突き出された相手の拳に対し、クリスは上半身を左に反らしてジャブを躱す、しかし男は続けざまに一発、二発と左拳を素早く突き出す。

 突き出された拳、クリスはこの拳を見て感じていた。素人の突きではなく明らかに格闘経験のある者の動き、慣れた、それも素早く鋭いジャブを放ってる時点で、男が明らかな強者であることを。クリスは何度も体を反らして躱し続けるが攻撃はしない、防戦一方だった。

 すると男は構えていた右脚でクリスの左脇腹目掛け蹴りを入れる、クリスは脇腹を守るために左腕を下ろし蹴りを受け止める。

「クッ!」

 肉体同士がぶつかる音、その蹴りの威力は凄まじく、受け止めた左腕から上半身に掛けて衝撃が響き、一瞬骨が軋むような感覚となった。

「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」」」」

「殺っちまえっ!」

「その亜人をブッ飛ばせっ!!」

 男が蹴りを入れた瞬間、再び観客の歓声が響いた。

 一瞬痛みにもだえるが、男はもだえさせる間すら与えず、左腕を下げたことで守りが手薄になった顔面目掛け、後ろに構えた利き手の右拳を勢いよく突き出した。しかしそれは空振りに終わる、拳を突き出した瞬間だった。突然正面にいたクリスの姿が消えたのだ。

 男は一瞬動揺するが視線を下に向けた瞬間、姿勢を低くして突き出された右腕の下、相手の懐に入り込んだクリスがいた。男はそれに気づく事が出来た、しかし時すでに遅し、クリスは利き手の右腕の掌球で腹部の中央を殴りつけた。

「グハッ!?」

 男は腹部に感じた激痛と強烈な吐き気で、もがくがその間すら与えず追い討ちを掛けるようにクリスは男の前で跳躍すると右膝で顔面を蹴った。その蹴りは顔面を捉えると同時に下顎にも直撃し、蹴られた男はふら付きながら地面に倒れた。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 クリスは口元から舌を垂れ出しながら荒い呼吸をする。体にたまった熱を逃がす為だ。

 終わった・・・。――――――誰もがそう思った時だった。倒れ込んでいた男が再び動き出したのだ。男はフラフラしながら起き上がると、右手でクリスに蹴られた下顎を摩った。

「ワンコロの亜人としちゃぁ、中々やるな」

 男は顎を摩りながら喋り掛けた。

「良いパンチと蹴りだ。もしお前が、良いプロボクサーになれてたかもな」

 皮肉めいたことを言う男の喋り口調は、負け惜しみなのか、まるでこちらを煽っているかのようだった。

「生憎、わたしはそんな物は望んじゃいない」

 しかし、今まで口を閉ざしていたクリスが冷静に返答した。

「喋り方と言い、風貌といい、お前見た感じ元兵士だろ?大戦の英雄様がこんな非合法な地下闘技場で燻っているとは、

 その言葉を聞いた瞬間、クリスの尻尾は大きく上がった。

「時間の無駄だ、さっさと終わらせよう」

 クリスの静かな、しかし殺気だった声で男を黙らせると、再び拳を構えた。

「そう来なくっちゃ!!」

 男はやや興奮気味な声を上げながら、拳を構える。だが拳を構えた瞬間、クリスが男の膝に勢いよくタックルした。

「なッ!?」

 そのまま男は仰向け倒れ、上に乗っかる形となったクリスは男の右側に動くと男の顔面を右腕で押し付けた、男はもがき抵抗し起き上がろうとした瞬間、起き上がってがら空きになった男の背後を取ったクリスが男の首に腕を巻きつけ頸部脈を力強く締め上げた。

「この・・・野郎ッ・・・」

 男は足をバタバタさせて、両手でクリスの締め付けている腕を掴んだり、肘でクリスの脇腹を打つなどの抵抗をするが、クリスは力を弱める事無くきつく締め上げ続けた。









 その瞬間、クリスの目の前に見えた会場の光景が一変した。クリスの目に映った光景は灰色の雲で覆われた曇天と迫撃砲や榴弾、銃弾が飛び交う戦場だった。

 乾燥したリングの砂だった地面は黒く湿った泥となり、兵士の屍がそこかしこに散らばっていた。あたりは火薬の臭いと腐った血肉の臭いが充満し、さきほどの観客の歓声は、突撃する兵士の喊声に聞こえた。

 その戦場の中に敵兵の首を背後から腕で強く締め上げてる状態のクリスがいた。首を絞められた兵士はもがき苦しみながらも、逃れようと足をバタバタさせ、両手で締めているクリスの腕を爪を食い込みながら掴んで抵抗していた。しかしその抵抗虚しく、コキッ、という何かがへし折れた音と同時に兵士の首は右斜め傾けたまま地面に倒れた。すると殺めた兵士の瞳と目が合った。

 その瞬間、一瞬の動揺と同時に、戦場の光景から先ほどの会場の光景に戻った。その時には男の抵抗が止み、バタバタとしていた足は大人しくなり、腕でだらんと垂れ下がっていた。どうやら気絶したようだった。

 クリスは締め上げた腕を解放し、気絶した男の体をそっと地面に置いた。その瞬間、カンカンカンッと終了の合図を知らせるコングが鳴り響いた。クリスの勝利で終わった試合だったが静まりかえった会場、観客からの歓声は無く、それとは逆に観客席から送られたのは、落胆と勝利したクリスに対しての囁くような罵詈雑言だった。

「チッ、またあのクソ亜人かよ・・・」

「賭けてた金が灰になっちまった・・・」

「くたばっちまえ、あの亜人」

 クリスはそれらの陰口を振り切りながら出口に向かった。帰り際のクリスは、尾をだらんと下に垂れ下がり、顔は無表情だったが、薄茶色の瞳にはどことなく寂しさを感じさせた。

「強いですね、あの亜人」

 クリスに対しての罵詈雑言が囁かれている観客席の中に一見変わった二人組の男がいた。一人は金髪のショートヘアで、耳が尖ったエルフ種族の若い男と、その隣に茶色いスーツを着た、いかにも紳士のような男が座っていた。その男の見た目は五十代後半ぐらい、短い口髭を生やし、どことなく威風を感じさせる姿はまるでのような風貌の男だった。ローリー・ジョナスは出口に向かう亜人を見つめた。

「見たことない犬の亜人ですね、見た感じ北地方の犬種のようにも見えますが?」

「確かに彼は、亜人としては珍しい犬の亜人だ。先の大戦でかなりの戦果を上げ、英雄とまで称され、彼は亜人の中で数少ないこの国のを持つ一人となった」

 隣に座っていたゲネル・トイラーは答えた。

「しかし彼は何故こんな所で?」

 ローリーの質問にゲネルはフゥーと深く息を吐き喋り始めた。

「人権というのはあくまで建前に過ぎない、人権を持ったとしても亜人というレッテルが貼られている以上、人間が権力を振るうこの世界で普通に生きていけるのはまず難しいだろう・・・」

 その問いを聞いたローリーは自分の耳を触った、彼もエルフ種族の亜人であることから気持ちは痛いほど分かっているのだ。ゲネルは立ち上がった。その時にはもう観客はいなくなり、静まりかえった闘技会場の姿があるだけだった。

「なんとしても、クリス・ケルベ大尉が必要だ」











 ――――早朝――――


 破れた生地に綿が出たボロボロの窮屈なベットにうつ伏せの状態で寝ていたクリスは目を覚ました。クリスは口を大きくあけ欠伸し、尻尾を振るうとベットの埃が舞った。まだ倦怠感が残る重い体を起き上げ、クリスはそのまま洗面所に向かった。

 天井につけられた一個の電球が洗面所を不気味と薄く照らし、洗面所に設置された鏡、その鏡一面は水垢で汚れ、淵や外側は黒く錆付いていた。洗面器にもカビが生えている有様だった。

 クリスはそんな洗面器の蛇口を捻り、洗面器近くの棚に置いてある、鎮痛剤が入った錠剤ボトルを取ると、三錠ほど取り出して口に入れると、鼻先を上に向け、片手てに持ったシリンジで水を飲んで薬を流し込んだ。

 ここ最近、慢性的な頭痛や悪夢に悩まされていた。大戦によって患った精神的な後遺症と医師から診断され、鎮痛剤と精神安定剤を服用を余儀なくされていた。

 テーブルの上に置かれた紙袋、その中に入っていたベーグルを一つ取り出し朝食の代わりに食べ初めた。

 このベーグルは昨日の試合で勝ち取った金で買った物だ。しかしここ最近ベーグル以外のパンを食べたことが無い、闘技場で勝ち取った金は僅かで他は税金や家賃などに払っていた。そのためクリスにとってベーグルが唯一の食事だった。

 クリスの部屋のタンスや棚の上には写真と数々の勲章が飾られ、埃付いた写真には片手に小銃を持って、迷彩柄の戦闘服を着て荒野に立つクリスが写っていた。戦場では戦果を上げ英雄とまで称されたが、今となっては過去の栄光に過ぎない。

 今では軍を辞めて仕事を探そうとも戦争で負ったこの後遺症のせいで仕事がつけず、地下闘技場で賭けの試合を行って稼ぎ、太陽の光もあまり届かない半地下の家でベーグルを食事にして生活する日々を送っていた。考えてみれば戦果と引き換えに与えられた人権など何の役にも立たなかった。しかし惨めだとは思っていない、むしろ住処があるだけマシだと思った。

 ベーグルを食べ終えた時だった。コンコンと玄関のドアをノックする音が聞こえ、ここに客人が来るとは珍しいと思いながらクリスは玄関に向かった。

 古びた木製のドアを開けるとそこにいたのは一人の男だった。中折れ帽子を被り、茶色いスーツを着た紳士姿の男、短い口髭を生やした見覚えがある懐かしい顔だった。

「ゲネル大佐?」

「ナタリア前線ぶりだなクリス大尉」

 ゲネル・トイラー大佐、彼は大戦時に北西の国境付近に位置する、後に激戦区となるナタリア地方の前線に配属された部隊の指揮を執っていた。その部隊の一人だったのがクリスである。

「調子はどうだ?貴官が軍を辞めてから手当たり次第探したが、まさかこんな半地下に住んでるとはな」

「ここは犬小屋よりマシですよ」

「そうか、」

「それで私を探してまで一体何のようですか大佐?」

「まあ話を聞け、君に極秘の任務を依頼しに来た」

極秘任務、唐突に言われたクリスは一瞬驚いた。

「任務?なんかの冗談ですよね?私は軍を辞めた身ですよ?任務を受けるなら他にもっと優秀な部下を」

「四人だ」

 クリスの言葉を遮るようにゲネルが発した四人と言う言葉、ゲネルは続けて言った。

「大尉、この数字の意味が分かるか?君が言う優秀な兵士の数だ、彼ら四人はこの任務を引き受けたが結果、誰一人として生還しなかった。上層部は他に優秀な兵士を選びクリス、君の名前が挙がった。君意外に適任がいないのだよ」

 クリスは悩んだ、そもそもこの任務の重要性が良く分からなかったからだ。それに戦場に戻るという事にクリスに抵抗感があったからだ。

「もちろん報酬は弾むそうだ、どうだ引き受ける気になったか?」

 報酬、その言葉にクリスは興味を持った。もしかしたら今までより良い生活を送れるかもしれないむしろ千載一遇のチャンスではないのかと一瞬思った。いまのこの社会で私の生き場は少ない、しかし兵士として軍人としての生活はここより断然良い。しかしそれを引き受けて良いのか?クリスは葛藤の末に出た答えは、

「引き受けます」

 クリスのその返答を聞いて、ゲネルの安堵の表情を浮かべた。

「それで任務の内容は?」

「極秘の故あまりここでは公言できない、任務の詳細はカルパナの基地で話そう」









 ――――カルパナ共和国、ブンダキ地方上空――――


 オレンジ色の夕日に照らされながら一機の多用途ヘリ「UH」が飛んでいた。地上の景色一面は緑の森林で覆われ、一部では田んぼと集落が見え、その光景は未だに馬車を輸送手段とししているカルパナ共和国がいかに北と西に位置する他の先進国と比べ発展途上国であるのが分かる。

 トール大陸の南に位置するカルパナ共和国は現在、同じ発展途上国である隣国イパルナと国境付近で小規模であるが度々軍事衝突が起こっていた。

 アルリカはこれ以上の戦闘激化を抑えるためにカルパナ側に介入、結果としてカルパナはアルリカという大きな抑止力を持ったことで徐々に衝突は収まっていった。

 やがて一面森林だった景色から、それとは似合わない灰色の滑走路と建造物が見えてきた。滑走路には装甲車といった軍用車や、軍用の多用途ヘリやそれよりもでかい輸送ヘリ「CH」などが多数横一列に並んでいた。ここがイパルナとの紛争地帯付近に位置する場所に建設されたアルリカ陸軍の基地である。ヘリはゆっくりと基地に設置されたヘリ用の滑走路に着陸した。ヘリのドアが開きプロペラの轟音が響く中、クリスはヘリから降りた。外に出た瞬間、南らしいジメジメとした湿気と熱気を感じた。もう日が沈み掛けてるというのにまだ蒸し暑く、全身を黒と白の被毛に覆われたクリスにとって温暖な地域ほど嫌いな物は無かった。

 周囲には小銃を持った兵士達や整備士、なかには現地で雇った労働者が多数いた。基地の兵士達はヘリから降りた犬の亜人を珍しそうに見ていた。

「クリス大尉ですね?」

 突然背後から話しかけられ、後ろを向くとそこにいたのは金髪の一人の兵士だった。しかしその兵士は耳が尖っており、人間ではなくエルフだということすぐに気づいた。その青年はクリスの前まで来ると姿勢を直し敬礼した。

「第5歩兵師団所属、ローリー・ジョナス中尉であります。これよりクリス大尉を司令官のところまで案内します」

 そうしてクリスはローリーに案内され基地の建物に入った。建物の中にはレーダーや通信機などの機械が外側に並べられ、その中心には巨大な地図が置かれていた。そこにレーダーや通信機などに目を見張りながら非戦闘員の兵士たちが職務に就いていた。やがて「司令官室」と書かれた部屋の前まで着くと重層そうな灰色の鉄製のドアをローリーがノックした。すると部屋の中から野太い声で「入れ」と言われ、クリスはローリーと続いて部屋に入った。

「クリス大尉をお連れしました」

 そこにいたのは、司令官の階級が付いた緑色の軍服を着た白髪の男がいた。

 いかにも司令官室という感じの茶色いデクスとその左右にはアルリカの国旗が二つ立てかけられていた。デクスには電話機や「戦死者リスト」と書かれた書類が置かれていた。男はクリスを一目見たあと片手に持った書類に目を通した。

「ご苦労下がっていいぞ」

 そう言うとローリーは部屋から出た。

「北からわざわざご苦労、私はここの司令官であるロヴェイン・フーバーだ」

「クリス・ケルベです」

 クリスは自己紹介と同時に右手を前に出すと、ロヴェインもそれに応えるように右手を出して短く握手した。

 「クリス・ケルベ元大尉、君の事はゲネル大佐から聞いた、なんでも先のでかなりの戦果を上げたそうじゃないか?」

 するとクリスのプロフィールが記載された一枚の書類にロヴェインは目を通す。

「出生は不明、196年にアルリカ軍に入隊、訓練や成績はトップ、198年のナタリア前線に配属され一人で敵塹壕に乗り込みこれを制圧、まさに英雄に相応しい戦果だな」

 ロヴェインはデクスの引き出しからA4サイズの封筒を取り出すとそれをクリスに渡した。

「見たまえ」

 クリスは言われた通りに封筒から4枚ほどの書類を取り出した。そこに記載されていたのは白黒映し出された藁で作られたいかにも古風な民家が映し出された村の写真ともう一枚は、少女の写真が載ったプロフィールだった。

「君にやってもらう任務は人質の救助だ、貴官にはこの書類に載っている少女を救出してもらう」

「救助?何故それが極秘任務扱い何ですか?」

「まぁ話を聞け、現在カルパナと隣国イパルナとの間の国境付近で小競り合いが起きている事は知ってるな?知っての通りいつ事が起きてもおかしくない状況だ、そんな中「PN」と名乗るイパルナの過激派組織が現地にいたアルリカ人を拉致したと報告があった、調査の結果イパルナ国内内部、国境付近の」

 するとロヴェインは先ほどの民家の写真を指差した。

「このチムイという小さな村にいる事が分かった。多分奴らの拠点だろう。拉致されたアルリカ人こそがこの少女だ」

 もう一枚の少女の写真が記載された書類を今度は指差した。

「奴らはこちらが情報を嗅ぎ付けたことがバレるとその度に拠点を移動している、だから外部に情報を漏らさないように極秘扱いとしている、理解してくれたか?」

クリスは書類を見て、一瞬眉をしかめた、ある程度理解したつもりではあったがやはりこの任務には違和感を感じた。何故この任務で優秀な兵士が四人も戦死することになるのだろうか?

「ようは私がこの拠点に侵入して、少女を救出すれば良いと言う訳ですね」

「そうだ、しかしこの任務は貴官一人で行うわけではない他に三人の兵士も同伴する。三人と貴官を合わせて分隊よりも少なめの計四人で任務を実行する、まぁまた詳しいことはブリーフィングで話そう、ローリー」

 そうロヴェインが呼ぶと部屋に先ほどの青年、ローリー・ジョナスが入ってきた。

「クリスを例の場所に案内しろ」

「ハッ」

 再びクリスはローリーと共に司令官室を出た。




目の前でクリスが部屋から出たことを確認すると改めて部屋中を見渡し、デクスや椅子に盗聴器などが仕掛けられていないか確認する。

「ゲネル」

ロヴェインが呼んだ。すると部屋の隣室となっている横の扉からゲネルが出た。

「今度こそ、この任務が成功すると思うか?あの

静かな口調でゲネルに問う。

はクリスにとって、とても簡単な物だと思いますが?」

するとロヴェインは表情を強張らせた。











「これは人質の救出なんかでは無い、強いて言うならと言うべきだろう」   




                                ――続く――   

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