第23話 頑張ったのは誰?

 あれから色々試行錯誤しながら、分かり合いたいと言う想いをひなに伝えている。

何より明の頑張りに美佐は驚いていた。毎日バスタオルでじゃれさせては、お気に入りのボールを取り合う。ひなの戯れ方が激しくて美佐は恐くなるときがある。

それでもドキドキしながら立ち会っている。

キャンキャン……ウーウッーワンワン。そこ声に本当足がすくむ。

「私もやった方が良いの?」

「ううん。僕だけで良いんだ。

そのかわり昼間はいっぱい遊んであげて。特に口周りを掴んだり、お腹を見させてぐちゃぐちゃに撫でる。良い? これはとても大切だよ。さぼったら判るからね」

「さぼるわけないでしょ~ねぇひなちゃん!」

当のひなはちょこんと座って私を見て首傾げまくり。

「もう~ほんとに遊んであげてるでしょ?」

 それから暇さえあればくしゃくしゃと撫でてあげると、自然にお腹を出すようになってきた。

気持ち良いんだね……口開けてトロンとしている。可愛いい!

それから一ヶ月後、ひなは誰の手が触れてきても大人しくされるがままにしているようになった。

 公園では、突然ひなの頭を触ろうとする方たちに出会う事がある。そんな時美佐は必ず一声かけることにした。

「撫でて頂けるんですか?良かったね~ひなちゃん! そしたら顎下からお願いしていいですか?

上からは、わんちゃん達怖がって吠えたり為るんですよ」と。

子供たちは怖いも知らず。

真正面からは触れないように、

横からは触れて貰う。大きな声は驚くから小さな声で名前呼んでねとか。出来ることはしないと

お互いの幸せのため。

 この間のシェパードのお姉さんとスーパーでばったり。

「ひなちゃんやっぱり頭良いですね。最近吠えなくなったし、知らない人にもちゃんと撫でさせてあげてますね」

「はいそうなんです。あれから家族で頑張ってます」

「それが一番大事ですよ。じゃまた公園で」

お世辞も無い。笑顔も薄い。

だから、褒められた事が美佐は途轍もなく嬉しかった。

 夜、明にその話をすると、

「良かった! ひなも僕達も頑張っているもんな。特に美佐さんの努力は素晴らしい!」

「いゃ~もう~照れるな~」

褒めて育てる一人一匹は、今や同士のように、解り合いつつある事を感じられて明はホットしていた。

「たまには夜のお散歩行こうか?」

お散歩の言葉に反応したひなは大喜び! 健も色めき立った

「おとん! 帰りにアイス! ご褒美にダッッのクッキーアンドチョコ!」

「なんで健がご褒美貰えるの?」

「なに言ってんだよ! おかんが眠りこけていたとき、俺が散歩連れて行ってますけど! 何回も~」

「あ! チクった! 言わないって約束したじゃん」

「へぇ~そんなことあったの? 知らなかったぞ? アハハ。

それよりひながイジイジしてるから行くよ。ダッッは了解した。美佐さんお財布忘れないでね」

ったく生意気な息子なんだから!

お小遣い減らす! 絶対!って……まあでも、何だかんだ助けてくれるから……許そう。

シラッとテレビを見ている健に、舌を出しているところを明に見られた。

「美佐は幾つ?」

「年は関係ないもん」

ひなは、その声に反応するかのように、また首を傾け美佐を見ていたのだった。



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笹山家と姫のありふれた日常 紫陽花の花びら @hina311311

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