地球の平和のために





 誰とは言えないが世界的有名人の方々には帰っていただきました。

 気を取り直し、響は咳払いを一つこぼす。 


「……と、このように地球外敵性侵略者の脅威は全世界共通であり、各国が危機感を抱いているというわけだ。理解したか?」


「それはわかったんですけど、結局僕にどうしろと? 言っておきますけど、僕なんてどこにでもいるような普通の高校生で、むしろヘタレで、一人じゃ何もできない上にしょうもない嘘付くようなダメ人間ですよ?」


 自己分析が過ぎる宗介である。

 しかし響は続ける。


「そう……我々のリサーチでも、君は何ら特異点のない平凡な高校生であることは判明している。だからこそ、この任務に相応しい」


「だからその任務ってのは……」


「簡単な話だ。君の学園に潜む侵略者を、見つけ出して欲しい」


「それ、簡単ですか?」


 口をへの字にして、宗介は呆れかえる。


「まあ聞け。君は、地球防衛部に所属しているな? 肝は、そこにある」


 響きは、バックモニターに様々なデータを表示させた。


「侵略者らによる諜報活動は、実のところ、世界中で観測されている。そのほとんどが偶発的に発覚したところが多く、我々が知らないだけで、奴らは日々地球のことを調査していることは間違いない」


「要するに、今まさに地球は監視されているってことですか?」


「正確には、監視、だ。その諜報活動が、ある時を境に、突然影を潜めてしまったんだ。……そしてその時期は、桐島ひなたが『地球防衛部』を発足した時期と一致している」


「え!? それってどういうことですか!?」


 宗介は声を荒らげて立ち上がる。


「我々の調べた限り、高校生にして、『地球防衛』という名を冠するチームを大々的に立ち上げ、活動を始めようとした記録はない。よって地球防衛部とは、現状地球上で唯一存在する、学生主体の地球防衛チームということになる」


「あんなとんでもねえ名前の部活が地球のあちこちにあってたまりますか」


「そういうことだ。そのようなチームなど、これまで存在していなかった。……つまり、侵略者は畏れたのだ。地球防衛部という若きチームを。地球の将来を担う若人達による、地球防衛意識の醸成を。侵略者による諜報活動が鈍化したことこそ、その証拠と言えるだろう」


「まさかの抑止力」


 宗介は驚愕に顔を引き攣らせる。


「だが、相手は半世紀以上……もしかすれば、人類が文明を築いてから地球を監視し続けた侵略者。それほどの脅威を持つ者達が、その程度の障害で手を引くとは到底考えにくい」


「それでも、あの地球防衛部だけで諜報活動をやめちゃう侵略者なんて、ほっといても問題ないと思うんですけど……」


「奴らを甘く見るな。その科学力を鑑みるに、奴らが本気を出せば……地球など、で木っ端微塵に出来るだろう」


「それ、もう抵抗するだけ無駄じゃないですか?」


 身も蓋もない宗介であった。 


「結論を急ぎ過ぎるな。地球を破壊することなどいつでも出来るが、それは行われていない。ともすれば、やはり奴らの目的はあくまでも“侵略”ということだ」


「うーん、納得できたような、なんか納得できないような……」


「話を戻そう。侵略者が地球防衛部を脅威に思っている以上、奴らは、何かしらの調査を行うことは間違いない。つまりは、侵略者側が地球防衛部にコンタクトを取る可能性が極めて高いと言える。もしかすれば、人間に紛れて、既に栄優学園に潜入している可能性すら大いにあり得る」


「ちょっと待ってください。それって、要するに……」


「そうだ。地球外敵性侵略者が、君の周囲にいるということだ。そして……」


 響きは、宗介に手を差し出した。


「君には、その潜入者を見つけ出して欲しい」


「あ、無理っす」


 即答する宗介だった。


「決断が早いな……」


「いやいや、そんなの急に言われても無理でしょ。だいたい冴橋さんも同じ学校なら、冴橋さんがすればいいじゃないですか」


「いや、私はパイプ役に徹する。を考えても、部活動内外にそれぞれ人員を配置することが好ましい」


「その事態だと僕が真っ先にヤバいってことじゃないですか!」


「大丈夫だ。骨は拾ってやるから安心するといい」


「余計不安になりましたよ!」


 鼻息を荒くする宗介は、断固として態度を変えない。


「とにかく! そんな超が付くような重要任務、僕には無理です! そもそも、なんで一般人である僕がそんなことをしなければいけないんですか!」


「地球を愛する心、さ……」


「おたくらことの経緯を全部知ってるでしょ。どうせ全部調べてるんでしょ」


「冗談はここまでにしておくとして、成功した暁には報酬を出そう。先程も説明したとおり、地球外敵性侵略者は全世界の危機だからな。支援金も相当額保有しているからこそ、そこそこの額は出せるだろう」


 宗介は、目の色を冷たくさせた。


「……要するに、金を出すから命懸けの任務に就けってことですか? なんでしょうね、金さえ出せば下々の人は何でもしてくれるみたいなニュアンス。なんか、そういうのってちょっと軽蔑しちゃいますよ」


「日本円でくらいは出せるだろう。世界の命運を左右する金額としては端金かもしれないが……」


「全身全霊を以て任務に当たらせてもらいます! 地球の平和のために!!」


 地球の平和のためらしい。







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それゆけ!地球防衛部!〜怪しげな部活に入ったら地球外敵性侵略者まで探すことなったんだけど、そろそろギブアップしたい〜 @jambll

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