地球外敵対侵略者
「……ってことで山田宗介。あなたに任務を与える。地球、守れ」
冴橋響はやや宗介に告げた。
「唐突にも程があるのでは?」
「何か疑問でも?」
「徹頭徹尾疑問しかないんだけど……」
「仕方がない……では、事情を話すことにしよう」
「普通はそっちが先だよね、普通は」
宗介の声を無視するように、響は頭を一度下げた。
「とりあえず山田宗介。今日はここまで来てくれて、感謝する。緊張せずにゆっくり聞いてくれ」
「ここがどこだか知らないうえに来たんじゃなくて拉致されてて、おまけに今まさにロープで椅子に縛り付けられてるんだけど?」
薄暗いその場所は、どこかの地下のようだった。
外部の音は全く聞こえず、出入口は一つだけ。逃げようとしたところで、さっきのスーツの集団にたちまち捕えられてしまうだろうことは十分に想像できる。
そもそも、そんなことなど宗介には不可能である。なにしろぎちぎちに締め付けられたロープは、宗介の自由を完全に奪っていた。
「細かいことを気にしていては、地球なんて救えない」
「まずは僕を救ってくれたら助かります」
さすがにロープは解いてもらった宗介であった。
気を取り直して、響は再び口を開いた。
「まずは、今の地球を取り巻く状況について説明する。……端的に言えば、地球は今、地球外敵性侵略者に狙われている」
「へぇ~、それは大変だね」
宗介は笑顔で聞き流した。
「まさか……今の説明を聞いても信じていない、と?」
「今の説明だけで信じてたら現代社会なんて生きていけないから」
日々巧妙となる詐欺事件。複雑にもつれる人間関係。嘘と本音が入り混じる男女の距離感。
現代社会とは、かくも過酷なのである。
響きは、一呼吸置き話し始めた。
「端緒は、1947年に起きたロズウェル事件。そこで人類は、地球外敵性侵略者の存在を初めて認知した」
「……あー確か、UFOが墜落して宇宙人が捕縛されたとかいう、あの事件? でもあれって、こう言っちゃなんだけど、かなり眉唾な話だよね? 色んな説が浮かんでは消えてってるような状態だったはずだし」
「確かに当時から今にかけて、あの事件は世界中で取り沙汰されている。宇宙人の存在を確信する者、懐疑的にあの事件を見ている者、様々だ」
そして響きは、声色を変えた。
「……だがそれらは全て、ブラフでしかない」
「ブラフ? 嘘だったってこと?」
「嘘とは少し違う。いわゆるUFOが墜落したのは事実であり、でなければ、地球側が侵略者の存在を知ることなどできなかっただろう。……あの事件の本筋は、別にある。そのカモフラージュとして、当時の責任者は、敢えてUFOと宇宙人の存在を世間に晒した」
「カモフラージュって……」
「あの事件で実際に回収されたもの……それは宇宙船でも宇宙人でもない。一つの、装置だった。その装置は、人智を超えるものだった。いかなるスキャンも通じず、操作方法も不明。起動するだけでおそよ10年の歳月がかかったことが、その証拠だろう」
「そして装置を起動した時、人類は知ることとなった。地球が、狙われていることに」
「え、ええと……結局その装置ってのはなんだったのさ」
「観測装置だ。その装置は、地球のあらゆる情報を収集し、地球外へと送信していることがわかった。とりわけ多く含まれたものは、軍事関係、そして、各国の主要都市の情報……即ち、侵略のための情報収集だと判明した」
「し、侵略って……そんな……」
「ことの重大性が理解できたか? だからこそ、敢えて言おう」
響きは、床を指さした。
「……地球は今、いつ地球外敵性侵略者が襲来し征服されてもおかしくはない状況だ」
「……え、ええと……」
宗介は言葉に迷っていた。
何しろ彼女の言葉には証拠が何一つない。口調は淡々とし、確信が込められているようにも聞こえる。だがこれまで普通の生活をしていた宗介にとって、彼女の話は奇天烈が過ぎるものだった。
宗介の表情から疑いが拭いきれていないことを感じた響は、奥の手を出すことにした。
「ぐだぐだと説明したが、口で言っただけでは信じきれないところがあるだろう。……というわけで、来てもらった」
「誰に?」
「世界中の協力者だ。先ほども言ったが、これは、世界的な危機だ。故に、非公式ではあるものの、世界の首脳が協議し、資金を提供し、日々地球を守るための活動を行っている。その協力者の皆様に来てもらっている。……では皆様、どうぞ」
冴橋響の声を皮切りに、ぞろぞろとその部屋に人々が流れ込んできた。
その人物らを見た宗介は目を丸くする。
「あーー! なんかめちゃくちゃテレビで見たことある人達だ!」
「某国大統領に、某国主席、総理、国王と、とりあえず世界的有名人を片っ端から集めてみた」
「うん! 僕でも知ってる人達ばっかり! 誰とは言わないけど知ってる人達ばっかりだ!」
コンプライアンスに配慮する宗介であった。
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