最終話 夢のつづき

「なんか、新刊の予算のためだったっぽい」

「?」


 ウロクの話から察するに、こうだ。


「魔導省がうちの予算削って、手配書のヤツ捕まえるために冒険者ギルドへ回そうとしてたんだと。

 でもマトリのトップがその必要はないって思ってたから、俺たちを使って秘密裏に解決したっぽい? 時間外勤務だろ~これ~」

「ふむ。やはり、ディオン殿の計らいだったか」

「はからい~?」

「予算の都合もそうだが、お前に手柄を与えることもできる」

「……あー、やっぱ来年の序列審査会でスキルのこと言えって話?」

「だろうな」

「やだー俺司書がいいー」


 この世界において、魔導書はたしかに重要。

 だが、それ以上に人は【スキル】を重要視する。


 一説には【グリモワ】に紐付けた魔導書の書架は、知の女神の元だと言われている。

 無属性の空間魔法に位置づけられる魔導書用の魔法だが、研究者の中には唯一女神と交信できる魔法だと言う者もいる。それ故に、スキルを授かるのだとも。

 スキルは、神の祝福。

 この世界ではそう位置づけているんだろうな。


 前世の記憶を取り戻した俺は、一つの可能性を思い浮かべる。

 この世界での最初の記憶。

 俺に手を差し伸べる、美しい女性。

 顔が思い浮かばないのに、なぜか美しい。そう思う俺がいる。


 もしかしたら、俺をこの世界に導いてくれた女神なのかもしれない。


「──あ、フランせんぱーい!」

「ん?」


 カウンターに座って考えていると、風魔法の資料相談レファを受けた生徒が手を振って近付いてきた。


「先日はありがとうございます! おかげで、テストもバッチリでした!」

「お、よかったな~!」

「館内は静かに」

「「すいません」」


 もしこれが、女神のお導きってやつなら……。うん、わるくはないな。

 なんせ、前世の夢が叶ったようなもんだ。


「あ、せっちゃん」

「なんだ?」


 相変わらずクールな相棒。


「これからも、よろしくなっ」

「……ふん」

「あ、照れてる」

「照れてない」

「素直じゃないなー」

「虫はだまってろ」

「ひっどー」


 姉ちゃん。

 俺、ちょっと想像してたのとは違うけど……。

 異世界で司書として、クールな相棒と一緒に頑張ってるよ。


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詠唱不要のコードメイカー~司書を目指していた俺、転生してチートな(魔導)司書になったので選書に勤しみます。ただし魔導書~ 蒼乃ロゼ @Aono-rose

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