第14話 怪獣の呼称

 ‌デストロイアを倒してからというもの、街は活気に溢れていた。


 ‌破壊されてしまった高校は思いの他すぐに再建された。

 ‌また、いつもの日常が戻り始めていた。



 ‌午前の授業が終わり、弁当を食べるため寒空の屋上へとやってきた。


「……なんで寒いのに屋上なんだよ」


 ‌あの頃と変わらず、桃州ももすも一緒について来ている。


「……うっせぇな。ここが気に入ってるんだよ……」


 ‌――久々に桃州ももすと2人きりだ。


「お前、出席日数足りないともう一回高校1年生やり直しだもんな。俺は復活してからちゃんと学校行ってたぜ?」


「は? ‌なんだそれ! ‌すぐ連絡してこいよ!」


「お前の連絡先しらねぇし」


「……そうか」


 ‌スマホを桃州ももすに差し出す。



「……これだ。登録しておいてくれ……」



 ‌……よし。今のは絶対に自然な流れだ。

 ‌違和感無い感じで連絡先交換を提案したぞ!

 ‌私にしてはよくやった!

 ‌今年1番の大仕事をやってのけたぞ!!

 ‌今日は帰りにパフェ食べよう!



「お! ‌サンキュー」



 ‌……素っ気ない。もっと喜べよ……。



「そうだそうだ。怪獣細胞について副長官からの伝言だ。怪獣細胞持つもの同士じゃないと子作り・・・って出来ないらしいぜ」


「ぶぼっ!」


 ‌食べていた白米を盛大にぶちまけた。



「はっ? ‌何言ってんだお前! ‌バカかよ!」


「いやいや、俺はいつだって真面目だぞ?」


メガネの奥には、真剣な目が覗いている。



「あと、追加でほらよ」


 ‌桃州ももすは、緑色の薄い紙を取り出した。


「婚姻届。俺の分書いておいた」



「は? ‌何言って、何言って……! ‌はぁ!!?」


「結婚すれば、後白じゃなくて桃州になるよな。

もす・・さく。お前もモスラになれる。これで、嫌ってたゴジラってあだ名で呼ばれなくて済むんだぜ?」



 ‌――ゴジラ……。

 ‌その呼び名、昔は嫌っていたな……。

 ‌デカくて、乱暴者って言われているようで……。


 ‌――でも今はちがう。

 ‌正義が貫けるなら、怪獣ゴジラでいることも悪くない。

 ‌そう。ゴジラで結構。私はゴジラとして生きる。



「……私はゴジラとして生きる。お前はモスラとして生きろ」


「え……? ‌その答えって……? ‌そうか、俺とお前は別々の姓で生きるということか……。ここまで覚悟を決めてきたのに断られるのか……」



「……あっ。いや、そうじゃない。呼び名のことだ……」


「ん、あぁ、夫婦別姓・・・・でも構わないぞ。俺は気にしない」



「……違う……。そういうことじゃない……

……桃州ももすさくら、可愛い名前で気に入った……」


 ‌頬が熱くなる。

 ‌恥ずかしくて、桃州ももすの顔を正面から見れない。

 ……‌何言わせんだよ、バカ……。



「私は結婚しても、ゴジラとしての正義を貫くつもりだという意思表明だ!」


「うん? ‌よくわかんねぇな? ‌わかるように伝えてくれよ!」


 ‌――焦れったいな鈍感野郎!

 ‌桃州ももすの唇を、私の唇で塞いだ。



「これが答えと思え。……バカ」



 ‌――暫し沈黙が流れた。

 ‌屋上の寒さは、中々私の頬を冷ましてくれない。


 恥ずかしさに‌耐えかねた私が切り出す。


「ていうか、まだはえぇんだよ! ‌結婚は18歳になってからだろ。そもそも、どうやってゲットしたんだ婚姻届なんて……?」


美尾びお先輩にもらったんだ。美尾びお先輩から、"私じゃダメかな?"ってこの紙貰ったんだけど、はっきり"ダメです!"って言っておいた」


 ‌桃州ももすは想像してたよりも鈍感野郎だな……。


「"……じゃあ、私もさくらちゃんに結婚申し込もう"って言ってたぜ」


 ‌美尾びお先輩本当に来そうだななら。

 ‌嬉しくなくは無いが……あのエロ姉さんめ……。



 ‌――怪獣警報!怪獣警報!


「緊急アラートだ!」


 ‌桃州ももすが先に立ち上がった。



「行くぞ、ゴジラ・・・!」


「おう! ‌私の相棒、モスラ・・・!」


 ‌拳と拳を突き合わせた。




 ‌敵だろうと迷わず救う。

 ‌仲間と、桃州ももすと一緒に全部救うんだ。

 ‌これが私の正義。



 ‌――そう、私はゴジラだ。



 ‌――怪獣の呼称――




______________


これにて、この物語は終了になります。

楽しかった、面白かったという方は、是非とも評価の程よろしくお願い致します。

m(_ _)m


次回の長編作は、12月過ぎにカクヨムコンテスト参加作品になると思います。


応援頂けると幸いです。

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怪獣の呼称 米太郎 @tahoshi

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