第13話 デストロイア

 ‌桃州ももすと一緒にデストロイアの元へと向かった。


「2対1ならこちらに分がある!」

「コンビネーション決めるぞ!」


 ‌2匹の怪獣で挟み撃ちにして、攻撃を繰り出すのだがデストロイアには全く効いていない。


「少し弱ってくれないと、薬も効かないぞ……」


 ‌2対1になったのに気づき、デストロイアは街を壊すのを一時やめてこちらとの戦いに集中したようだった。

 ‌先程よりも早いモーションで‌光線を打ってくる。


 ‌――早い、避けきれない。

 ‌顔を庇うように腕を立てて半身になった。


 ‌その瞬間、突然地面から大量のツタが出てきて、ビームを防いでくれた。



「……ふふふ。お久しぶりです。私です。美尾びお蘭亭らんていですわ。助けに来ましたわよ!」



「その声は、美尾びお先輩……。死んでしまったんじゃ……」



「私も桃州ももすさんと一緒で、副長官に怪獣にさせられてしまいましたの。死にそうになった防衛隊員にムリヤリ怪獣細胞を埋め込んでるらしいですわ。命が助かったからよかったものの、どうなんですかね? ‌副長官訴えたら勝てますわよね?」


 ‌美尾びお先輩はご立腹のようだった。

 ‌伸びる触手で腕を組んで怒っているようだ。


「まぁ、綺麗な薔薇の怪獣ってところは気に入ってますけどね。3人でやりますわよ!」



 3対1‌。これなら行けそうだ。


 ‌デストロイアは更にギア・・を上げ、あたりかまわず光線を吐いてきた。

 ‌美尾びお先輩が必死に光線を防ぐが、まだ破壊されていない街の方向へ飛んで行った。


 ‌――街が危ない。



 光線の行先に見覚えのある怪獣が立ちはだかって街を守ってくれた。



「……オッサンか! ‌怪我は大丈夫なのか!?」



「治りが早いって言ったろ? ‌周りの街は任せろ! ‌お前は思う存分暴れろ、お前の信じた正義の為に!」




「……みんな。ありがとう。もう迷わない!!」


「そうだ。叶えたいものがあれば、躊躇するな!全てはお前の気持ち次第だ!」



 ――‌自分の信じた正義。


 ――‌お前のやりたいことはなんだ!

 ‌叶えたい正義はなんだ!

 ‌昔、桃州ももすに言われた言葉だな……。



 ‌デストロイアは、美尾びお先輩とオッサンが食い止めてくれていて、少し距離が空いた。



 隣にいた‌桃州ももすが語りかけて来る。


「怒りの気持ちによって吐き出される光線が破壊の光線なら、怒りではない違う感情を出せ」


 ‌久しぶりに聞く桃州ももすの優しい語り口……。


「怒りに支配されるな。‌お前ならできる。俺の大切な人・・・・



 ‌……どさくさに紛れて変なこと言ってんじゃねぇよ……。

 ‌……バカやろう……。


 ‌……でも、本当に生きててよかった、桃州ももす

 ‌……もう死なせない。どこにも行くんじゃねぇぞ。




 ‌心が暖かい。

 ‌こんな気持ちは久しぶりだ。


 ‌屋上で桃州ももすと過ごした時以来か……。

 ‌すごく暖かい……。


 自然と‌身体が輝き出した。



「行け! ‌今だっ! ‌お前の正義を叩き込め!」


 ‌輝きが段々と身体をかけのぼり口元が激しく引かったかと思うと、光線が吐き出された。


 ‌口から出された光線は桜色に染まっていた。

 ‌いつもの光線のような熱さは感じられない。

 ‌とても心地よい暖かさだ。



「お前の光線に、この薬を乗せてデストロイアに浴びせるんだ!」



 ‌桜色に光る光線に乗せるように桃州ももすは怪獣を元に戻す薬を撒いた。


 ‌光線は桜並木のように真っ直ぐ進んで行った。

 ‌光線に乗せて飛ぶ薬は桜の花びらのように舞い、季節外れの花見をしているような光景であった。


 ‌地上から見る冬の空には、ひこう雲のように一直線に桜色の雲ができた。

 ‌南の地平線から北の地平線まで桜色に覆われていた。


 ‌綺麗……。



 ‌光線はデストロイアを突き抜け、更に先へ先へと向かっていった。

 ‌暖かい光線は日本を北へ北へと駆け上がっていった。




 ‌最強の怪獣が倒されたこの日、この桜色の光景のことを桃州さくら・・・・・前線と呼び、皆は心から喜びあった。


 ‌桃州ももすあきらと、後白ごしろさくらによって作られた、桜色の暖かな光線。

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