Q.人類の至宝である天才少女が、【性技の味方】とやらを目指しています。あなたはどうしますか? A.許すわけねぇだろバカ野郎

モノクロウサギ

第1話 天才お馬鹿少女と世話係の攻防

──天才少女、氷室カナタはこう言った。『ボクに生み出せないものはない』と。


「できた! ついに完成した!」


 その言葉に偽りはない。彼女はなんでも発明する。そこに不可能という言葉はなく、彼女の頭脳はあらゆる正解を弾き出す。

 とある高名な学者は、氷室カナタの頭脳をこう分析した。現行の文明レベルから、十数世代ほど先の知識を宿していると。

 それはある意味で正解で、ある意味で間違いだ。彼女の頭脳は、確かに現代の文明レベルから逸脱したものである。

 だが、宿っている知識は断じて遥か未来のものではない。そんなチャチなもんじゃない。──彼女の頭に存在するのは悪魔の、いや創造神の知識だ。


「夜中からカチャカチャやってると思ったら……。またかよお嬢。今度はどんなデタラメを作ったんだ?」


 科学とは集合知の産物。たった一人の閃きを、大勢の識者が再現性を確認するために検証する。

 同じ手順を踏めば、誰もが同じ現象を引き起こすことができる。それが確認できて、初めて新たな『物理法則』として認められるわけだ。

 だから氷室カナタの生み出す技術は科学なのだ。彼女が導き出した通りの手順を踏めば、誰しも再現することができるのだから。

 例え、


「ふっふっふっ。今日のは凄いよ、迅」

「知ってる。そりゃもう、嫌というほど知ってる」


 年齢のわりに小柄な体躯。利便性を優先し雑に切りそろえたボブヘアー。チシャ猫を連想させるアーモンドアイに、どうしようもなく鬱陶しさが滲み出る美少女。

 氷室カナタは天才だ。その見た目からは決して想像できないが、世界を左右する叡智の怪物だ。


「今回、ボクが発明したのはコレだ! 【処女懐胎再現ホール】!!」

「なに各方面に喧嘩を売るようなゲテモノ生み出してんだこの野郎」

「痛い!?」


──だが同時に馬鹿である。それも自作したオナ〇ールを高らかに掲げるような、救いようのない類いの馬鹿である。


「毎回言ってるけどさ! ことあるごとにボクの頭を殴るんじゃないよ!? ボクの脳細胞の一つ一つは、人類の至宝なんだからね!?」

「だったら人類全てに詫びろバカ野郎。至宝で十八禁アイテムを作るんじゃねぇ。しかも処女懐胎とか宗教的にも不穏すぎるんだよ。聖母マリアを現代で量産しようとすんな、この罰当たり娘」

「処女は一つのブランドだぞ!? 人類なんて大抵がロリコンの……痛い痛い!? 迅の握力でアイアンクローはダメぇ!?」


 頭のいい馬鹿、もといお嬢が激痛によったのたうち回るが、不謹慎行為に対する折檻なので容赦なく〆あげていく。


「ちょっと迅! 黒羽迅太郎! ボクはキミのご主人様なんだけど!? 主人に手を上げるとか、いったい何様のつもりなんだい!?」

「お前さんのお世話係兼護衛様だわ。俺がいなきゃマトモな生活もできねぇ癖に偉そうにすんじゃねぇ」

「下剋上反対! 下剋上反対!!」

「うるせえよお嬢。んなに騒ぐと茹でたアボカドを口に放り込むぞ」

「……味付けは?」

「ねぇよ」

「……」


 見事に黙った。まあ、湯掻いただけのアボカドはクソ不味いので仕方ない。


「んで、話を戻すがな。なんでまた、そんな気色悪いアイテムを生み出そうと思ったんだ? またエロ同人の影響か?」

「その通り! 世の中には処女厨という悲しい性癖を背負ってしまった者たちがいる! そんな彼らを救わんとボクは立ち上がった! その結果がコレだ!」

「オナ〇を握り締めるな。突きつけるな。妙に肉々しくて気持ち悪いんだよそれ」

「コレは二つで一つの発明品でね。まずこちらの小型のピンを女性器に挿入する。この小型ピンによって相手の腟内をスキャンし、こちらの本体で環境を再現。さらに本体の最奥に、相手の子宮口に繋がるワームホールが生成される! これによって、相手の処女性を損なうことなく性行為が可能となる!!」

「……」


 二重の意味で絶句。内容があまりにもくだらなく、それでいて恐ろしいほどにデタラメであったから。


「……つまり、お嬢はそんなくだらない目的のために、SFに出てくるような転送技術を発明したと?」

「その通り!」

「バカ野郎この野郎」

「アイアンクロォォッ!? なんで!?」

「サラッと流通革命を起こすような発明品を生み出してるからだよ。それもエロアイテムで。世の中の学者先生たちを何度も泣かせるんじゃねぇ」

「ボクが作りたいものを作ってないが悪いのさ!? 文句あるなら、勝手に解析して応用すればいいじゃんか!!」

「そ れ が で き た ら く ろ う し ね え ん だ よ」


 何度も言うが、氷室カナタ産の超技術は、基本的に解析不可能だ。まったく同じ手順を辿りさえすれば、結果は再現される。アイテムも制作できる。

 ──だが、何故そうなるのかは分からない。観測不可能な未知の反応が連続するため、全世界の科学者が匙を投げた。


「俺ら人類ができることはな、お前の書いたレシピを寸分の狂いもなく、ミリ、グラム、秒をコンマの世界でなぞって、量産することだけなんだよ。応用なんて夢のまた夢だわ」


 再現性が観測されなければ、『氷室カナタは魔法使い』という結論で議論が終了するレベルでデタラメなのだ。

 それだけ、コイツのもたらす技術は隔絶している。それこそ、過程で生じる反応の一つを解明することを、生涯の研究テーマにする科学者が大勢いるほどに。


「にも拘わらず、お前さんは作りたいものしか作らねぇと言うし。作ったら作ったでエロアイテムかギャグアイテムだし。お前は大勢にオナ〇を作らせて恥ずかしくねぇのか?」

「だったら量産しなければいいじゃんか!」

「研究と利益のためにしなくちゃなんねぇんだよ」


 お嬢がもたらす超技術の数々は、一つ一つが人類を次のステージに押し上げるポテンシャルを秘めている。

 実際、お嬢を囲っている大企業【ユグドラシル・カンパニー】は、彼女が生み出すアイテムと、それによって発生する巨万の富によって、世界における不動の地位を確立している。


「ったく。勘弁してくれよお嬢。またうざったい虫が湧くじゃねぇか。オナ〇に集る虫の駆除とか、なんの冗談だってんだ」


──そのお陰で、お嬢の身を狙う輩は後を絶たない。犯罪組織、ライバル企業、外国政府。挙げていけばキリがなく、事実として過去に何度もそうした輩たちの襲撃を受けている。


「ふっふっふっ。その時は頼りにさせてもらうよ、【ブギーマン】?」

「意味深に笑うんじゃねぇ。カッコつけるならせめてオナ〇を置け」

「あいてっ」


 溜息を吐きながら、お嬢の額を指で弾く。ニシシッと嬉しそうに笑っているのが、余計に鬱陶しいところだ。

 ただまあ、俺はお嬢の護衛として雇われているのは事実だ。仕事である以上、原因はくだらなくとも全力を尽くしはする。


「ったく。仕事ってんなら、さっさとそのオナ〇のレシピを寄越しな」


 お嬢の発明品とそのレシピは、すべからく上に提出する。その規則に則り、早く寄越せと催促。


「おやおやおやぁ? 散々文句言ってたわりには、迅も興味がある感じかにゃ? でもコレ、自作するのは大変だよー? 片栗粉〇の方がお手軽でオヌヌメ」

「鬱陶しい絡み方をしてくんな。……あと、なんだよ片栗粉〇って。どうせ下ネタなんだろうが、その手の知識は何処で仕入れてくるんだ本当に」

「そりゃもちろん、漫画や薄い本とかから」

「はぁぁ……。取り上げられないのをいいことに、好き勝手しやがってからに」


 お嬢は好きなものしか作らない。下手に強要してヘソを曲げられても困るので、管理しているユグドラシルもその辺りは了承している。

 だからこそ、教育に悪影響だと分かっていても、大人たちはお嬢にその手の本を与えている。何故ならお嬢は、いかがわしい同人誌やコミックから発明のインスピレーションを得ているから。

 ……その結果、今回みたいな馬鹿らしいアイテムがたびたび開発されるのだが、その辺りはご愛嬌というやつだ。超技術の産物であることは間違いないし、工夫次第では中々どうして有用なアイテムに化けたりもする。


「はいコレ。設計図。なんか質問とかある?」

「そうだな……。理屈はどうせ理解できんから脇に置いておく。その上で何点か質問が」

「なに?」

「一、そのワームホールとやらは一方通行か?」

「ノン。双方向。ただし、ワームホールの出入口の向きは決まってる。手鏡の背中同士を合わせたイメージで、鏡の部分が出入口」

「二、子宮口の前にワームホールが生成されるそうだが、その部分に異物が存在した場合は?」

「異物より手前に生成される。ロー〇ーとかにもちゃんと対応してる。その辺りは抜かりなし」

「三、本体が女性側の環境を再現するとあるが、再現された側の感覚はどうなっている?」

「快感がリンクするようになってる。本体と連動して、ピンから電気信号が発信されるんだ。男だけが気持ちいいのは不公平だからね」

「オンオフは?」

「一応は可能。ちょっと面倒だけど」

「手軽に、スイッチかなんかで切り替えられるようにはできるか?」

「んー? まあ、うん。意図は分からないけど了解。ちょっと設計図を書き換えるから待ってて。他にはなにかある?」

「ああ。これが最後。この本体の伸縮性は? 特に穴のサイズとか広がったりするか教えてくれ」

「……質問の意図がよく分かんないけど、ある程度は大丈夫だよ。男側にフィットする設計になってる」

「OK。じゃあ可能ならば、本体の伸縮性を向上されるのと、穴のサイズを手動で操作できるシステムを組み込んでくれ。特に大きくする方向で」

「えー? そりゃ、できるけど……。なんで?」

「できるのならやってくれ」

「お、押しが強い……。はぁ、了解。もー、面倒だなぁ」


 ポリポリと頭を掻き、かったるそうにお嬢が作業机の方に移動していく。

 急な仕様変更すら二つ返事。発明したばかりであり、超技術の産物でも関係ない。本人曰く、『考えれば自然と手順や道筋が分かる』のだという。

 試行錯誤の過程が綺麗にすっぽ抜けている辺り、デタラメなことこの上ないが、常軌を逸した天才というのはそういうもの。


「現代のラマヌジャン、か」

「んー? 誰だっけそれ?」

「インドの有名な数学者だよ。ほとんど直感でいくつもの数学的な発見をしたと言われる、お嬢の同類」

「なるほど。つまりボクの下位互換ってわけね」

「おいおい。近現代の人物とはいえ、ラマヌジャンはれっきとした偉人だぞ?」

「ふっ。時が経てばボクだって偉人の仲間入りさ。そもそもナントカって人は、数学オンリーだったんでしょ? だったらボクのが圧倒的に上だね! だってボクはなんでもできるからね!」


 言葉と同時に突きつけられるレシピ入りのUSB。それはこの短時間で、それも雑談の片手間で内容を修正してみせたという宣言。

『なんでもできる』という言葉が、決して大言壮語の類いではないという、なによりの証明。


「……本当、全部事実なのが腹立たしいんだよなぁ」

「なんでよ!?」


 お嬢のドヤ顔がウザったく思えてしまうのは、俺自身が微妙な敗北感を抱いているからか。

 なにせ将来の偉人、いや現在進行形で偉人に数えられるだけの功績を、お嬢はすでに残しているわけで。

 後世でどのように語られるかは不明だが、科学という分野に関していえば、どこぞの救世主と同等の位置づけにされても全然おかしくないのだから、その凄まじさも理解できよう。


「──未来においては、ボクは空前絶後の偉人として、憧憬の念を向けられることになるだろう! 世界中の床事情に革命を与え、少子高齢化を食い止めた正義の味方、いや【性技の味方】として!!」

「んな不名誉な称号を与えさせるわけねぇだろバカ野郎」

「痛いっ!?」


 なに『上手いこと言った』みたいなドヤ顔晒してんだこの天災バカは。それは異名じゃなくて汚名って言うんだよ。


「なんでよ!? 素敵じゃないか性技の味方!」

「お嬢、企業所属。ユグドラシルの看板背負ってる。ブランディング、大事。Are you OK?」


 ユグドラシルが許すかってんだ。そんな愉快な異名をよ。芸人じゃねぇんだぞ。

 お嬢はユグドラシル・カンパニーにとって、ある意味で最高の看板商品だ。自分たちの名前も、お嬢とセットで確定で後世に伝わるんだから、もっと偉大で胸を張れる名札を付けるに決まってるだろうに。


「それを抜きにしても、個人的に気に入らねぇんだよ。情事の経験もねぇ、本で集めたエロ知識だけでドヤ顔晒してる小娘が、性技の味方を名乗るなんて笑わせる」

「あぁぁぁっ!? 言ってはならないことを! 言ってはならないことを! それを言ったら戦争でしょうが!!」

「大騒ぎするってことは、お嬢自身も気にしてるって証明なんだよなぁ」

「ぐぬぬぬっ!! でも、そういう迅だってアレでしょ!? 私と大して歳も変わらないし、どうせ経験なんてないんでしょ!?」

「んなわけねぇだろタコ。普通に経験あるわ」

「はい嘘。迅って絶対童貞じゃん」

「どういう意味だこの野郎」


 なんだその断言はコラ。馬鹿にしてんのかオイコラ。


「……え、まさか本気? 冗談でもなく?」

「ここで見栄張る方がみっともないだろ。マジだよマジ」

「……そ、それは、恋人、的な?」

「そこですぐ恋愛にもってこうとする辺り、やっぱりお嬢は小娘だなぁ」


 分かりやすいぐらいに動揺するお嬢の姿に、自然と笑みが零れてくる。エロエロと叫ぶわりには、微笑ましいことこの上ない。


「そういうんじゃねぇよ。店だよ店」

「……ホッ。なんだ素人童貞か」

「オイコラ。店を舐めんな小娘。相手はプロだぞ。客に夢を見させて報酬を貰ってんだ。一般人の惚れた腫れたの方が、素人のお遊びなんだよ」

「えぇ……。擁護が必死すぎる」

「当たり前だ。同じプロとして敬意を払ってんだから。──特に俺が買っているのは、ハニートラップ対策としてユグドラシルが用意してる超一流だ。冗談抜きで勉強させてもらってんだよ。師を侮辱されたら、そりゃ黙ってはおけんだろ?」


 護衛が色を知らないなんて論外だからな。そんな護衛は護衛じゃない。ハニートラップの格好の餌食なんだから。

 だから対価を払い、夢の世界に没頭し、その手練手管を真剣に学ぶんだ。そこに侮りなんかあっちゃいけねぇ。


「お嬢の安全は、彼女たちがいてこそって部分もあるんだぜ? 悪く言うのは失礼だ」

「……分かった。その点に関しては謝る。──でも確認はさせてほしい。お店の人に、恋愛感情とかは抱いてないんだよね?」

「あってたまるかそんなもん。ハニートラップ成功するってのと同義じゃねぇか。ガッツリ信用問題だわ」

「……じゃあ、恋人とかはいない?」

「それもいねぇよ。弱味になる」


 護衛役の親しい人間を狙って、警備体制に隙をつくるってのは常套手段だ。当然、対策をしている。『そもそも持たない』という、根本的かつ一番どうしようもない対策を。


「……ふーん。つまりボクの護衛をしている限り、迅は一生独身と」

「そうなるな」

「そっかそっか」


 ……嬉しそうだなぁ、オイ。


「なんで急に機嫌良くなってんのかねぇ」

「ひーみーつー」

「いや、全く隠せてねぇけどな。あと一般的な感性を持つ男の視点でツッコミをいれさせてもらうが、オナ〇片手にしてる時点でラブロマンスは始まんねぇぞ」

「……うるさいんだよ!!」

「オナ〇を投げるな」


 照れ隠しで投げるにしても、もうちょっと他に物はないんか。グロテスクすぎるわバカ野郎が。


「このっ、このっ!」

「USBも投げるな。壊れたらどうするんだ」

「涼しい顔して回収してる癖に文句言うな! 相変わらずこういう面では優秀だな!?」

「そりゃ護衛だからな」


 実弾を相手にすることなんてしょっちゅうだからな。ほぼ引きこもりみたいなお嬢の投擲なんて、慌てる方が難しいっての。


「はい、確かに。んじゃ、提出してくるからちょっと待ってろ。──その間に、そのタコみたいな顔を戻しておけよ?」

「〜〜〜っ、うるさぁぁい!! とっとと出てけー!!」


 子供の癇癪のような大絶叫。そこに込められた感情を考えると、自然と頬の端が上がってしまう。


「頭は究極的に良いんだが、やっぱりお嬢は馬鹿なんだよなぁ」


──馬鹿と天才は紙一重。昔の人間は、実に的を射たことを言うものだ。






 ◇◇◇






 なお、それから暫く経ったある日。


『──ユグドラシル・カンパニーが、またしても素晴らしいアイテムを発表しました! 【外部産道型出産補助機】と名付けられたこの装置は、妊婦の子宮口にワームホールを生成することで、母体の負荷を最小限にしながら新生児を取り出すことができるというものです。この画期的な発明に対し……』


 お嬢の開発した超高性能オナ〇ールは、医療器具として全世界に発表された。


「なんでよ!? ボクの開発したアダルトグッズが、なんで医療現場に流されてるの!?」

「そりゃまあ、大人の努力というやつだろ」


 まあ実際は、上に提出する際に個人的なアイデアを添付した結果なんだが。

 いやだって、あのオナ〇を使えば、肉体に負荷をかけることなく子宮口まで手を伸ばせることだし。本体の穴のサイズも、かなり大幅に変更が効くように改良できたし。

 ……なら、ねぇ? もっと有用な使い道があるよなと。俺じゃなくても、思い浮かぶ奴は思い浮かぶだろ。『これ、本体にナニを突っ込むんじゃなくて、本体からガキを引っ張り出す感じで使えば、世の中のためじゃねぇの?』って。


「処女懐胎は!? 全世界の処女厨の希望は!?」

「んなもんドブに捨てるだろ普通。んな少数の性癖のために、宗教に喧嘩売るかってんだ。よしんば処女で妊娠したって、出産になったら危険かもしれんだろ」

「そういう時こそ、アレ使えば良いじゃんか!!」

「じゃあいいじゃねぇか」


 開発者がそれを言ったら、もうその時点で話は終わりだろうが。それが正しい使い方ってことでファイナルアンサーだろ。


「てかよ、そもそもお嬢は前提を三つ間違えてる」

「……なんだよぉ」

「前提その一。処女厨なんて性癖を持ってる奴は、いや正確に言えば現実に当てはめる奴だ。そんな奴は、すべからく女と縁のない童貞だ。必然的に、相手が必要なあのオナ〇とも無縁になる」

「ぬぐっ」

「前提その二。アレを自前で用意できる奴は金持ちだ。それも性行為のためだけに手に入れるような馬鹿は、金持ちの中でも一握りの雲上人だ。そこまでいけば、道具なんて必要としねぇんだよ。適当な小娘に小金ばらまいて、ひっかえとっかえすりゃ、それで終いなんだからよ」

「ぬぐっ……」


 お嬢、この時点で言葉に詰まる。だが残念なこと、もっと根本的な間違えがあるんだわ。


「前提その三。これがいっちばんの根っこの部分なんだがな。処女厨ってよ、相手の純潔を自分で散らすこと、つまり誰の色にも染まってない相手を、自分色に染めたいってだけであって──別に奴さんら、処女膜を保護したいわけではなくね?」

「……あぁぁぁっ!?」


 お嬢、絶叫。そりゃそうだ。だって明らかに需要が間違ってんだもん。処女膜残ってても他の男と事実上やってるなら、それもう処女厨のストライクゾーンの範疇外だろって話よ。


「な、なんてことだ。このボクとしたことが……」

「いや残当だろ。エロ同人を元ネタにしてる時点で。フィクションを現実に持ってくんな」


 やってることが、完全にエロ動画を教科書にしてる童貞の所業じゃねぇか。現実に殴られて当然だろ。


「そんな……」

「お嬢よぉ……。そこで本気でショック受けるのも、それはそれでどうなんだよ?」

「性技の味方が、こんな初歩的なミスをするなんて」

「……駄目だこりゃ」


──氷室カナタは空前絶後の天才だ。だが同時に、救いようのない馬鹿である。





ーーー

あとがき

気晴らしに書いた、なろうの短編コンテスト(一話完結作品限定)用の作品なんですがね。

あそこ、最近まったく触れてないんで、環境分かんないんですよね。特に下ネタの許容範囲とか。

一応、他の作者の方に下ネタレベルを伝えて、『大丈夫じゃね?』とは言われはしたんですが……。

それでも不安なので、読んでくださった方の中で、なろう有識者の方が入れば是非コメントください。

セーフorアウトだけでも結構ですので。

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Q.人類の至宝である天才少女が、【性技の味方】とやらを目指しています。あなたはどうしますか? A.許すわけねぇだろバカ野郎 モノクロウサギ @monokurousasan

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