第15話 その後・・・

ルカがゴクアク警備会社に入社して3年が経った。

色々な事があり過ぎた。

取りあえず命があったことに感謝しよう。


今日は会議室に多くの社員が集められている。タイガ社長が中心にいて、その横にリキ先輩とリュウ先輩がいた。

社長はあれから数回会ってきたが、二人の幹部は初めてみた。

こんな偉い人だらけということは、この会議はとても重要なことなのだろう。多分噂されている関西進出に伴う配属が発表されるはずだ。


ルカは出来れば選ばれないことを願っていた。

家族にも友達にも会いづらくなってしまう。気分転換も兼ねて始めた習い事も辞めなくてはいけない。

それに新たな土地で一から始めていくのは大変である。今でさえデタラメなことだらけだから。

ただ、やばい先輩たちから離れられるのなら悪くはない話かもしれない。

寡黙で無害そうなケースケ先輩と、若くて格好いいカズチ先輩と一緒だったら尚更いい。


そして会議は始まる。

お約束の会社全般の話が出た後に、タイガ社長から予想通り関西支店設立の話が出た。ケイジ先輩が物件の契約をしたりと色々と動いてくれていたそうだ。

ということはケイジ先輩は絶対関西支店に異動になる。いや、これは栄転と呼ぶべきだろう。

ルカはこれで益々自分が異動とならないことを願った。


「それではこれより異動する者を発表する」

社長は高らかに宣言すると、ケイジ先輩から次々と名前を呼んでいく。


「シロウ、マナブ、タナ・・・」

よし。選ばれていない。


「・・・シンカ、ヨシアキ。以上だ」

やった、免れた。ルカは神妙な面持ちを崩さないようにしながら、内心ガッツポーズをした。


そして社長は一呼吸置いて話を続けた。

「最後に支店長を発表する。関西で私の変わりに取り仕切ってもらう大切な仕事になる。支店長は、ルカ!」


・・・

ん? 耳がおかしくなったのかな。


「ルカ。前に来てくれ」

みんなの視線が集まるから自分のことなのだろう。

えー。私が支店長? むりむりむり、無理すぎる。


ルカはロボットのように手と足を一緒に振りながら会議室の前方に行く。

目を開けているのに視野に何も入ってこない。

「関西支店長。やってくれるな」

「えっ、あの。私、まだ入って3年しか経ってないし・・・」

「そんなことはいいんだ。ルカはトップに必要なものを持っている。それは無欲なことだ。それにな。この会社で前科がないのは、私とルカくらいだからな」

違いねえ。

前の方にいたチョウ先輩の呟きで会議室は笑いで包まれた。

それはルカが支店長になることを歓迎する拍手のようであった。



会議で衝撃の発表があってから一週間後にルカは大阪の伊丹空港に降り立った。

「支店長待ってたぜ」

待ち構えていたのはスキンヘッドにヒゲ面の大男である。

「さっそく仕事だ。難波のラブホテルに行くぞ」

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ゴクアク警備会社 田仲ひだまり @hidamari-club

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