寒がり彼氏

そうざ

Boyfriend Vulnerable to Cold

「温かいお茶でも飲んで行ったら?」

 私としては、かなり勇気の要る台詞だった。

「あぁ……そうしよっかな。寒っ」

 彼氏の返事は素っ気ない。やっとその気になってくれたのか、本当に気候に耐え兼ねての発言なのか、微妙だった。

 私の彼氏は極度の寒がりだ。そして、もどかしいくらいに奥手。付き合い始めて半年、初めて向かえるクリスマス・イヴだと言うのに、私が勇気を出さなければ食事だけ済ませて早々に帰ってしまったかも知れない。短気でせっかちな私は、もう我慢が出来なかった。

「おぉ、寒寒寒っ」

 コートは勿論、ニット帽もマフラーも手袋もそのままに、彼氏は電気ストーブの前に陣取り、未だに震えている。

 仕方なく、私は先にベッドで布団を被り、彼氏を誘った。

「そんな寒いんなら……こっちに来たら?」

 意外にも、彼はそそくさとやって来た。が、一向に次の行動に移ろうとしない。堪り兼ねた私は、自分から服を脱いだ。それでも彼氏は戸惑うばかり。私は舌打ちをし、無理矢理、剥ぎに掛かった。

「なっ、何すんだよっ、寒いだろぉっ」

「冗談じゃないわよっ、女に恥を掻かせないでよっ」

 貧弱な身体に如何にも似つかわしいモノが、恐れおののくかのように股間の真ん中で首をすくめて縮こまっていた。

「こんなとこまで着込んでっ!」

 その後の事はよく覚えていない。私を我に返らせたのは、彼氏の大きなくしゃみの音だった。

 ベッドの周辺に、剥ぎ取られた皮や脂肪や筋肉や臓器が散らばっている。そして、骨だけになった彼氏が頭蓋骨をかたかた言わせながら震えていた。

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寒がり彼氏 そうざ @so-za

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