後半はまさに疾風怒濤

 美貌の青年アテナイのティリオンと、お転婆姫スパルタのアフロディアとのラブロマンスを中心に、神視点で描かれる古代ギリシャの物語です。この神視点が作品にピッタリと合っており、かつ(特に物語後半では)没入感も得られます。
 歴史の影でありえた話、という意味で正しく時代小説だと思います。

 本作を楽しむのに、古代ギリシャに詳しい必要はありません。三つだけ押さえておけば大丈夫です。
●当時のギリシャはポリス(都市国家)間の覇権争いの最中であること。
●二大ポリスのアテナイとスパルタとは犬猿の仲であること。
●ティリオンはアテナイ人、アフロディアはスパルタの姫。
 これだけ押さえておけば読むうちに分かっていくと思います。ときどきある「解説」もあなたを助けてくれるでしょう。
 ギリシャ人名はとっつきにくく感じるかもしれません。章単位で読むと次第に整理できる、すんなりと頭に入ってくるのでは? とお勧めします。一気読みするのも良いと思います。

 章ごとの、シリアスとコメディとの寒暖差にクラクラしながら拝読しました。登場人物たちの愛憎が巡り、行き違い、反射する様(さま)が、胸に熱く刺さると思います。特に個人的なことを申せば、ラスト三章がたまりませんでした。

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