08 ジョセフの報告とリリアのお願い
「ここだよ。 で、この隣が……私の部屋」
「なるほど」
クリフが使う予定の空き部屋を案内したリリア。
空き部屋の中を見てみるとそこそこ広い。
「クリフさんが着てた王家の鎧は……、鍛冶屋に持っていくみたい」
「かなり傷が入ったからな。 直しておかないと不味いだろう」
また、クリフの着用していた王家の鎧は一旦鍛冶屋に持っていくようだ。
発見された時点でかなりの傷が付いていたので、ある程度は直しておかないといけないようだ。
「じゃあ、場所を教えたから……、父様の元に行く」
「俺を追放した魔術師について何か分かればいいが……」
「手……繋ぐ?」
「君がそう望むなら……」
「ん……///」
部屋の場所を案内したので、次はジョセフの部屋に行く。
報告後の状況を聞いておかないといけないだろう。
ジョセフの部屋に行くまで、リリアの頼みでクリフと手を繋いでいった。
(クリフさんの手……温かい)
クリフの手の優しい温もりを感じ取れ、嬉しそうに微笑みながら。
その微笑みは、クリフには見えてなかったのだが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「父様、お待たせ」
「失礼します」
「おお、案内は終わったのだな? ささ、好きな場所に座ってくれ」
ジョセフの部屋にはフレアやメルア、その婚約者二人が既に座っていた。
「クリフさんとリリアさん、何かお似合いですね」
「セイン君、からかわない」
「まぁまぁ、とにかくすぐに本題を話したいから」
手を繋いだまま入って来たのを見たセインがニヤニヤしながら話しかけて来たが、リリアはムッとしながら叱った。
ジョセフは宥めながら本題に入っていく。
「まず、クリフ君の追放の件を報告したが、どうも国王様はクリフ君が死亡したと言う報告が例の魔術師から報告があったと言う」
「え!?」
「やはりか……。 奴ならそう言うだろう」
最初に切り出した話題がクリフを追放した件のようだ。
ジョセフが国王に報告をした所、どうも国王は魔術師からクリフが死亡したと言う報告をしていたようだ。
リリアは驚くが、クリフはやりかねないと悪態をついていた。
「それで、どうなったのです?」
「私は彼が生きていてミユリス領にて保護をしていると伝えた。 そして追放されたとクリフ君自身が言っていたともね」
「なぜ、虚偽報告をしてまで?」
「奴はどうも火力を伴わない職業を嫌っているようでな。 国王様相手にも対立していたそうだ。 【タンカー】は要らないと」
魔術師が虚偽報告をしてまで、クリフを消したかった理由はやはり彼が【タンカー】という防御重視の職業だからだ。
火力至上主義の魔術師は、勇者と聖女など討伐に向いた職業のみでいいと常々言っていたそうだ。
「でも、他の勇者パーティーは?」
「もちろん、クリフ君を評価していたよ。 そもそも勇者パーティーには【タンカー】の加入は必須事項なのさ」
「それを魔術師は不快感を持ったと?」
「だろうな。 だから、私は国王様に魔術師がサウスベイと繋がってないか取り調べてくれと伝えたよ」
ジョセフは魔術師がサウスベイと繋がってないかを確認するために取り調べをするようにという事も伝えていた。
これに関しては、新たに情報が入り次第伝える予定のようだ。
「今後の勇者パーティーは?」
「魔術師とタンカーを新たに探すそうだ。 前の魔術師を追放かつ投獄を行った上でな」
「虚偽報告をしたから……だね?」
「ああ、国王への虚偽報告は重罪だしね。 さて、私からの報告はここまでだ。 夜を迎えるから今日は休むように」
ジョセフの報告はここで終わる。
真剣に聞いていたフレア達は魔術師の所業に怒りを露にしたが、投獄されるのでそこは安心だろう。
解散の号令を出した後で、それぞれの部屋に戻っていく。
「あの……クリフさん」
「どうした、リリア?」
部屋に着く前でリリアがクリフに話しかけてくる。
リリアはモジモジとしながら彼にこう頼んだ。
「今夜……一緒に寝て欲しい……」
……と。
婚約破棄された錬金術師の令嬢は、【タンカー】の男に恋をする イズミント @izumint-789
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