オモイデサガシは彷徨う。幸せと儚き思い出と、恨みと復讐の導くものとは

幸せの対極にあるのは恐怖。
月野さんは相反するものを上手に折り混ぜながらオンリーワンの作品を書かれる作者さまです。
物語の糸をつむぐように自分だけの言葉で一つひとつ丁寧に紡いでいくこと、その大切をいつも教えられています。
はっとするような優しさに溢れた文章は心地よく、でもそれなのにどこか恐ろしい。
その不思議な魅力についても考えていたのですが自分なりに思ったことは、作品が食事や和スイーツに込められた家族との時間、他者との時間を何よりも大事にしているから、そこに零れんばかりの幸せがあるからこそ闇が怖いと思っちゃうのかなと思い至りました。
本作は人を喰う妖魔の物語。
そこには恐ろしさも優しさもそしてどうしようもない寂しさも、そしてぎゅっと抱けば壊れてしまうような儚い感情もあります。
美しい黄昏のような感情に支配されてください。

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