心と体があたたまる温泉

 今日はガルナモイトさんたちと一緒に畑仕事で汗を流して、夕方前には宝石神殿の4階にある部屋で休憩をとっている。


「久しぶりに中腰での作業だったから、体のあちこちが凝ったかもしれない」

「コパは大丈夫なの」

 一緒に作業していたコパリュスは大丈夫みたいで、見た目は少女だけれど身体能力は高かった。


「疲れたのなら、温泉はどうでしょうか」

 ムーンが提案してくれる。そういえば最近は宝石神殿にあるお風呂で済ませることが多くて、温泉に行く機会が減っていた。


 元の世界にいたときは週末になると、北関東の湯畑で有名な温泉や見事な石段がある温泉など、その県にある温泉をすべて回った記憶があった。なつかしい記憶で、もし可能ならまた北関東の温泉巡りを楽しみたい。


「たまには温泉でゆっくり体を休めるものよさそうね。コパリュスとムーン、スターも一緒に温泉へ入る?」

「コパは一緒に温泉へ入るの」

 コパリュスが私の腕を取って笑顔を見せる。


「わたくしは部屋で休んでいます」

「ぼくは、ムーンといっしょに、へやにいる」

「コパリュスと行ってくるから留守番をお願いするね」

 ムーンとスターと別れてから、コパリュスと一緒に温泉の近くにある宿屋を通り過ぎて、プライベート用の小さな浴場へ向かう。


 脱衣所につくと水の精霊であるサファが姿をみせた。

「サファとルビーが温泉を見つけてくれたおかげで、体と心が温かくなって新鮮な気持ちと体の疲れが取れるよ。いつもありがとうね」

 お礼を言うと、サファが敬礼して態度を示してくれた。


「コパは早く温泉に入りたいの」

「温泉は逃げないから慌てないでね。サファも今度は一緒に遊ぼうね」

 サファに言葉をかけると、サファはもういちど敬礼したのちに姿を消した。


 扉を開けて、コパリュスと一緒に小さな浴場がある部屋へ入る。コパリュスは何度も温泉に来ているので、手慣れた手つきで体を温めてから体を洗う。私もコパリュスの動きを確認しながら体を洗った。


 小さい浴場といっても、湯船には数人が入れる大きさがあった。コパリュスと一緒に湯船に入ると温泉水がこぼれるけれど、温泉水は源泉から引いているのですぐに湯船を満たしてくれる。


「やっぱり温泉は格別よね。体が温まるだけではなくて、肌もすべすべになるからうれしい。コパリュスも温泉を満喫している?」

「体が温まって気分ものんびりできるから、いつまでも温泉に入っていられるの」

「コパリュスも温泉を気に入ってくれてよかった。時間を忘れるくらい温泉は魅力だから、今度は大きい湯船がある女性浴場でみんなと一緒に入りたいよね」

「コパも大きい湯船は楽しみなの」


 しばらくの間、コパリュスと他愛もない話しをしながら温泉でくつろいだ。充分に体が温まってから温泉を出て、コパリュスと一緒にとなりにある宿屋で水分補強をしてから宝石神殿へ戻った。


「温泉は気持ちよかったよ」

 部屋で出迎えてくれたムーンとスターへ声をかける。


「メイア様、疲れはとれましたか」

「血行がよくなって体が軽くなった気分よ。次はみんなで一緒に温泉へ入ろうね」

「楽しみにしています」

 ムーンが答えてくれる。


「ぼくも、いっしょに、はいる」

「ムーンもスターも一緒に温泉を楽しもうね。もちろんコパリュスも一緒よ」

 コパリュスがうれしそうに私の腕を取って笑顔を見せてくれた。


 今は宝石神殿にある温泉のみだけれど、ほかの場所にも温泉があればぜひ行ってみたい。北関東にある県のように特色のある温泉がたくさん見つかれば、温泉巡りの旅ができそう。

 温泉のあるすてきな日常を思い浮かべながら、夕食の準備を始めた。


(了)

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【Web版】宝石神殿のすてきな日常 色石ひかる @play_of_color

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