最終話:私の貧乳ライフハック
痩せていても太っても、そこにいつもある私の貧乳。小さな胸は、小さな胸なりに愛着があるというものだ。私の前をかすめ通って行った男達や、私のつまらないプライドも何もかも見てきた愛すべき貧乳。
女の価値は胸だけで決まるものではない。そんな事は分かっている。
見た目が生み出すイメージのあれこれは、時にはマイナスになり、時にはプラスになる。それを大いに利用し、人生に役立ててきた人間。それが私だ。
アラフォーになりでっぷりとした私は、最近友達からこんな事を言われた。
「痩せてる時の無雲ちゃんは、何だかとっつきにくい感じに見えるわね。今の親しみやすい感じもなかなか良いわよ」
今の私は、親しみやすく見えるらしい。中身の本質は何一つ変わっていない私だが、見た目で得する感は今でも拭えないようだ。
どうせならば、感じ悪く見えるよりも感じ良く見えていた方が良い。話しにくいよりも、話しやすい方が良いし、とっつきにくいよりもとっつきやすい方が良いわけなのである。
私の職業は、作曲家であり、色々な事に手を出しているクリエイターだ。個人事業主の私が仕事を獲得するには、ユーザー側の受け取るイメージはとても重要なものだ。
歌舞伎町を闊歩していても、一度もキャッチに声を掛けられなかった私のライフハックは、ありとあらゆる面で今は良い方向に動いてくれている。真面目そうな方が良いのだ。愛されやすくなる見た目の方が良いのだ。しかし、下心を持った人間には関わらないでいたいのだ。
私はこれからも、この貧乳とともに、人生を歩んでいく。
博士に見せてくれる眼鏡は、デザインを変えて今も私の顔に掛かっている。
両親の遺伝子によって作られたこの見た目の特性。これからも、大いに利用させてもらおう。あわよくば、もう少し痩せられると良いのだが────。
────完
歌舞伎町を闊歩していても一度もキャッチに声を掛けられなかった私の貧乳ライフハック 無雲律人 @moonlit_fables
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