第3話 解放されてる健康女の応答
希望退職というものの、リストラの標的にされたアラフィフ女性二人。いさ子さんとエリ子さん。元同僚で現在、フリーランスのひろみさんに居酒屋で相談。
健康ひろみさんから、クリアな回答を得た二人です。
「で、、いさ子さんもエリちゃんもどうするんですか?」
「やめない。」「やめたくない」
「じゃあ、悩むことないですね。面談は仕方ないから、その都度やって、辞めませんという。それに、希望退職でやめる人が多数出てきたら、おのずと仕事はありますよ。自分本位に、会社が必要、会社員という立場が必要なら、希望退職募集には希望しない!って対応ですね。」
今度は、鶏のから揚げをもぐもぐしながら、ひろみさんが答えました。
「でもね、ひどいでしょ。面談している専務や部長が貢献できてると思わないし。正直いって、こんな状況はあんた達の責任だって言いたいよ。」
「そうそう、天気とゴルフと健康の話しかできないような、おじさんに今後の人生考えろと言われても、真っ先にあんたが辞めなさいよ!って言いたい。」
「私だって、もっと使ってくれればいいのに。まともな仕事も与えないで、今の私の仕事内容みて、要らないみたいなこと言われて。おかしいよ。」
「そうよそうよ、ちゃんと人材活用も出来てなくて、いきなり辞めてくださいは無いよね。活用できないあんたが辞めて誰かと交代してほしいよ。」
何だか感情的な感覚が大半になり、論理的ではない内容となっています。
いさ子さんとエリちゃんのラリーは、止まらないのでした。
ひろみさんは、といえば、テニスの試合を見てるように二人の間のラリーを右、左と顔を動かしながらも、ちゃんと聞いているのでした。もちろん三杯目の生中は注文しながらですが。
多分、この溜まったうっぷんを、社外の誰かに聞いてもらう会なのだと、察したひろみさんですが、なんて会話に参加すればいいか分からずラリーを見届けるのでした。
「で、、ひろみちゃんどう思う?」
振られてしまった。ま、まずい。何も思いつかない。この流れでは。
「で、、でも、そのおじさん真っ先に辞めたら、面談する人いなくなっちゃう。」
しまった!絞り出したのが、とんちんかんな回答だったと、固まるひろみさん。
「面談なんか、要らないのよ!!」
ですよね。っと思いながら。とりあえずとんちんかんな回答は収束で終了。ほっとするひろみさんです。
いさ子さんエリ子さんの、「・・・でもね、」からが二人の本当に話したかったことだったのですね。
「辞めちゃおうかな。なんか、こんな面談耐えられない。」
エリ子さんがつぶやくのでした。
「私も辞めちゃおうっかな、不毛な面談繰り返されても、私。専務をぶん殴ってしまうかも。怖い。」
いさ子さんがつぶやくのでした。
「ちょっと待って下さい。面談だって、永遠と続くわけじゃないし。希望しませんっていうだけだし。ましてや、ぶん殴るまでいかないと思いますよ。プライドが傷ついて耐えられないなら、もうプライドを掲げるのは止めればいいだけです。
プライドって、今の現状では、何の役に立たないような気がします。必要とされる、されないなんて、そんな承認欲求を中心に考えた案は、止めた方がいいですよ。」
「ひろみちゃんはいろんな人に必要とされているから、、だから、現在もちゃんと仕事出来てるでしょ。ひろみちゃんはいいよ。」
二人ともひろみちゃんを羨望と嫉妬の入り混じった目で見るのでした。
「必要とされていません。ましてや、絶対私じゃなきゃダメ!って思ってくれている依頼はゼロですね。ま、、あんたでいいや、、ぐらいはあるかも。多分わたしじゃなきゃイヤとか、絶対に私で、、って思ってくれている人は、、親ぐらいです。夫も微妙。ま、私ならいいかってぐらいは思ってくれてると思いますが。私の場合、仕事での契約や業務がないと生活できないし、実際必要だから。 必要とされてるなんておこがましいです。私でもいいかって感じでも大感激。」
いさ子さんもエリ子さんも、まるで自分たちがおこがましい、厚かましいといわれているような気になってしまい、ちょっとバツが悪くなってしましました。
そこで、いさ子さんが頭の中を整理しながら、ゆっくり話しだします。
「会社員でしかも、管理職でなく今のアラフィフまで来ちゃうと、ついつい評価されているかどうかに拘ってしまうのよね。どう思われているか。それがつまりは、必要とされているか否かなんだけどね。ついでに言うと、このまま辞めたら、長年の会社人生、切られたってずっと思ってしまうし思われる。また残ったら残ったで、社内で本当は、私みたいなのが、辞めてほしかったのにって思われる。どちらにしろ、自分の思うところじゃないのよね。」
そこでエリ子さんが、話し出します。
「わたし、辞める。辞めて違う道に行ってみる。なんか耐えられない、意地になって残るなら、開き直って違うとこ考えた方がいいような気がしてきた」
「そっかな、、、」
つぶやくいさ子さん。
「いさ子さん、エリ子さん。どちらが良いなんて検証のしようが無いんです。一番に大切なのは、自分で決断したって事実ですよ。残るも、辞めるのも。 私、フリーになって収入ゼロの危機に陥ったり、一緒に仕事している人の楽観的感覚にヒリヒリしたりするのよ。ただサラリーマン辞めたのも、一緒に仕事している人と相棒として、やっていくって決めたのも自分だ!って思うとすっきりするし、何とかしなきゃ!って思える。」
会社に辞めさせられた、とか、つけ込まれても残るしかなかったとか、周りの環境のせいにしないで、考えるチャンスに自分で決断しよう。ってことです。
残ったら残ったで、せっかく残ったのだから、会社の新たなスタートの為に目の前にある仕事を頑張る。仕事が無けりゃ見つけて頑張る。何思われてもいい!って覚悟。
辞めたら辞めたで、いいきっかけをもらったと思い、自分が本当にやりたいことを見つけたり、何かをゼロからやってみてもいいし、人生長いのだ。振り返らずに頑張る覚悟。
自分がどちらかに決断したということが、これからの糧になります。もう、人のせいにしちゃダメよ。っと健康女は答えるのでした。
健康女は、やっぱり心も健康 。
三人は飲むペースも落ち着き、最後〆におにぎり!お茶漬け!という声もなく、いさ子さんエリ子さんは静かに飲み会は終了したのでした。
さて、いさ子さんエリ子さんは、健康女ひろみさんの健康コメントを得て、どうするのでしょうか。次章に続く。
希望退職募集する会社、希望しない女 すぎたに あきら @hmitsuno
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