第2話 希望しない二人の女性と健康女
40歳以上150名希望退職募る。募集期間30日。各面談は他業務においてもい最優先にすること。その渦中での、55歳デザイナーエリ子さんと59歳総合職いさ子さん。
一回目面談を終えて間髪入れずのの2回目面談。
希望してないっつうの!と何度も伝えても、次の面談を会社側は、振り込んでくるのです。
「私の同期の子、面談中に再就職支援の資料 専務に投げつけたんだって。」
「子供いるデザイナーなんか、夫がいるからいいでしょ、的なこと言われて、訴えてやる!!って出てきた。」
もう、業務どころではありません。ここ、あそこ、で誰が辞める、誰が残る、この話題でもちきりです。ついでに、何言われた、何を言い返したなども。
エリ子さん、いさ子さんの両名は当事者であって、人のうわさ話でのんびりしているわけにはいきません。
「ひろみ、前に会社辞めて、東京行っちゃったけど、ちょくちょくこっちに帰ってきてるみたいなの。一緒に会ってみませんか?」
「たまに来てるんだ。彼女辞めた時が、この会社の雰囲気が良かった最後の年かもね。いいタイミングだったね。一人でやってるんだよね。」
そこで、1年前に会社を辞めて現在フリーランスデザイナーとして活動中の、ひろみさんに会うことに決めたのです。辞めてどうなの?。その後の保険とかどうしてるの?。こんな会社だめかな。。など、ちょっと違う角度から相談してみようと思ったのです。何せ、この状態で、エリ子さんいさ子さんの2人で話していても今は憔悴をお互い確認するだけなので。
ひろみさんは、エリ子さんの同期でもあったのです。
「うちの会社どんな状況か知ってるよね。ちょっと会いたいんだけど。こっち来る予定ある?そして時間ある?」
「知ってる。知ってる。ホームページにも出てたし。地方都市とはいえ、地元では有名企業だけあって、実家の母が私より先に知ってたよ。」
「・・・・」
「で私の同期達、そしてエリ子やいさ子さんはどうするのかな、、ってちょうど思ってた。」
「そのことで、いさ子さんも一緒に話したいし会いたいの」
「いいよ。来週週末に、そっち行くから。ただ私、仕事とか、五時で終了って決めてるの。だから、夜ご飯なら早め時間で。そして、いつも九時過ぎにはパジャマ。そして寝ちゃうから。早め時間約束でも大丈夫?」
フリーランスとは自分で時間をコントロールするのね。会社員で、日々他からの要因でずるずると遅くなったり、時間ある時に限って仕事が全くないとか変なストレスを抱えて過ごしているエリ子さんといさ子さんは先制パンチをくらったかのようにぼんやりしてしまいました。
「ひろみ。最近仕事があまり取れていないって言ってたけど。なんか、すっごく健康的な声だった。今の社内では聞けない声のオーラってやつ。」
「きっと本当に健康なんだよ。ひろみちゃん」
エリ子さんが握ったスマホにひろみさんの声のオーラが見えるのか、ふたりとも、じっと眺めてしまうのでした。
なにも進展しないまま、募集をする会社と辞めない人々の平行線が続く中、ひろみさんとの約束の日。
程よくにぎやかな居酒屋で約束しました。
「久しぶりです。いさ子先輩!そしてエリちゃん。」
正に健康な女性という感じで、ひろみさんは、現れたのです。東京行ってもっと華美になっているかと思いきや、シンプルなノースリーブニットにすっきりパンツの出で立ち。髪はショートボブで普通なのに、どこか洗練したものを知り尽くして行きついたシンプルさを感じるのでした。ニットから出ている二の腕も程よく筋肉がついてすっきり。後ろ姿で年齢がわかるといった背中も、明らかにすっきりとしているのでした。まず、50過ぎて、ノースリーブを着こなしていることに、二人は感心するのでした。
まずは乾杯。
「ねえ。どう思う。もうあなたの仕事はありませんっていわれたのひどいよね。」
「私なんか、あと一年で通常の定年でしょ。居続けても希望退職上乗せ金と同額だから、辞めるメリットないな。って。辞めませんって言ってるのに、これからの人生を考えろとか、エリ子さんと同じように、残っても、仕事があるか分からないとか、言われたの。」
ビールのジョッキを傾けながら、ゆでそら豆をつまみ、二人の勢いに圧されつつも、ひろみさんはうん、うん、と、話を聞くのでした。
そして、一息ついたときに、ひろみさんが
「しかし、仕事がなくても、会社にいれるなら最高じゃない。仕事や役割が無いのは
いさ子先輩やエリちゃんのせいじゃないし。仕事なくて、一定の給料と社会的立場が確保できるなら問題ないじゃん。 会社行ってパソコン向かって、何かWEBの勉強してもいいし、会計の勉強してもいいし。ぼんやり過ごしてもいい。仕事はありませんって脅しのつもりかもしれないけど、私だったら、あら、申し訳ないな。でもありがたいかも、って。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ふつー仕事探したり、見つけたりしないとお金にならないのに、会社にいても仕事はありません。っか。うらやましいよ。」
そして、最初の一杯目が少なくなったところで、ひろみさんは、居酒屋億の店員さんに、すっきりとした、二の腕をまっすぐあげました。
「すいませーん。生中おかわり!」
やっぱり、健康だ。電話越しの声とイメージがぴったり。
身も蓋もない感じに最初の20分が過ぎようとしたところ、いさ子さんがひろみさん話しました。
「プライドの問題なのよ。私、今まで何してきたんだろう、って悲しくなるのよ。それに、辞めないで欲しい社員は、面談も一回きりで、形だけよ。2日と開けず何度も面談組まれるのは、私達は必要ないってことでしょ。頭にくる。どう思う?」
隣で、エリ子さんは、うんうんとまっすぐな視線で、応援しているもです。
話しているポイントにズレが生じていることに気が付いた、ひろみさんは、二杯目の生中を受け取りながら、答えました。
「状況が急変していることは分かりました。まず、会社が必要としているか否かは、考えるの止めましょう。二人が会社を必要としているか否かを考えましょう。それから、プライドもいいですが、こだわり過ぎるとろくなことはありません。一旦脇においておきましょう。あと他の人は自身のこれからに何の関係もないので、比較するのは止めましょう。不公平なのは、当然で、今考えても意味がありません。」
生中飲みながら、ちゃんと聞いていたのね。端的すぎる回答でした。そして、健康的思考回路。健康的意見に対峙する、二人は、、、次章に続く。
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