顔の交換という高度な医療技術が存在する世界。主人公に、とある女性が顔の交換を持ちかけられるところから物語は始まります。主人公にとって顔の交換は光明になり得る何かでした。顔は自らの暗い過去との繋がり象徴する部分であり、それを変えることがイコール自分を変えるきっかけになるのだから。しかし主人公の過去が明かされていくにつれ、その様子が変わっていきます。顔の交換という不思議な設定はあくまで演出上のもの。その本質は主人公の心情にあります。この描写が鮮やかです。ぜひ読んでみてください。
『顔』というものを通して描かれる、人間の内面。見た目、肩書き、経歴。可視化された情報が、『あなた』を作る。上塗りされた情報は、『あなた』を偽る。だとすれば、見えない内面は不要なのか、捨てられるのか、変えられるのか。そういった部分に、面白い切り口から挑戦した作品です。確かな文章力で表現される内容は、読んでいて飽きませんでした。
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