虚構を泳ぐ舟

作者 紫陽_凛

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★★★ Excellent!!!

動画配信を通じて「何者」かになりたい主人公。

自分は周りの人間とは違うのだと、多感な時期の中学生らしい冷笑的な視線や燻ぶる自己顕示欲、根拠の無い自信に突き動かされている心情がとても丁寧に描かれていて、思わず心にチクリと刺さるものがあります。

そんな彼の日常に、「宇宙人」を名乗るお姉さんとの出会いから訪れるささやかな変化。

それは紫煙のように苦くて仄かに甘いボーイ・ミーツ・ガールの物語でした。

少年とお姉さん。
人間と宇宙人。
偶像と実像。
虚構と現実。

二つの狭間で揺れ動く少年の心は、いったい何処へ行き着くのでしょうか。

爽やかだけど、ちょっとだけ切ない。
とても素敵なお話です。
是非、ご一読ください。おすすめです。

★★★ Excellent!!!

大人が読めば、主人公の夢や希望、期待は虚構に見えるかもしれません。
しかし誰しもが一度はもっていたであろう光。その光が作り物と思えてしまった経験があるのかもしれません。

主人公の少年の前に現れたのは「現実」であるマヲリ。
少年に現実を突きつけつつ、それでも少年に期待をしているように見えました。
私はマヲリのように「希望の光は未来へも続く事実であってほしい」と思いました。

二人の「はざま」が現代の若者の生々しい感情表現とともに描かかれており、少年とマヲリに流れる独特な空気感や温度を肌で感じれます。

この物語を通して感じる思いは千差万別でしょう。
若かりし時にもっていた光。自分の中にある光を立ち止まり見つめ直すことができる作品です。

★★★ Excellent!!!

最新投稿分まで拝読させていただきました。

ませていて、少し背伸びしたくて、特別な何者かになりたい「ぼく」という主人公が、自身を宇宙人だと語るミステリアスな「彼女」と出会う事で始まる物語に興味を惹かれ、次々と読み進めたくなりました。

現実にあり得るニュースや、それに対する劇中世界の反応がアクセントになって、物語の纏う空気に独特の重みを生み出しており、そこに加えて思春期ならではの無力感、感情の動きが一層のリアルさを引き立てていて、主人公と同じ世界に生きているかのように錯覚させられます。

完結も既に見据えられているという事で、少年の物語がどのような終わりを見せるのか、楽しみにさせていただきます。