とある教室の季節

「初めてのカフェに入ったらまずは店長おすすめメニュー頼んじゃうよね」

　隣の席の和泉《いずみ》は唐突に何の前触れもなく話しかけてきた。いつものことだ。
　もうすぐ昼休憩も終わるというのに彼女はまだメロンパンを齧っている。僕は本に栞を挟んだ。

「でもね二宮《にのみや》くん。店長って誰よりもそのお店のことを考えてる人だよ。その人がおすすめしてくるメニューなんだから信頼できるでしょ。お店の看板商品といっても過言じゃない」
「まあそれはわからんでもない」
「だから私は店長のおすすめをなぞって生きていきたいわけよ」
「まあそれはわからん」

　僕の返事を聞き流して、彼女は話を飛ばした。

「だから来週の夜、私と一緒に風流しに行こうよ」


　昼休憩にパンを齧る彼女と本を閉じる僕の青春風流ラブコメです。