第6話 不平等な世の中は清々しいほど変わらない

世の中は不平等だ。

笠木かさぎちゃんにはここがお似合いよキャハハハハ」

はプレハブ校舎の一番北にある個室トイレ。

私にな場所。

「私が留学してる間どうだった?誰も構ってくれなくて寂しかったんじゃない?」

少女漫画とかに出てくる優しくて可愛い完璧な帰国子女っていうのは嘘だ。

少なくともリサちゃんは違った。

幼稚園で絵本を作った時、完成間近の私の作品をグシャグシャにして水たまりに突っ込んだあの頃の性格のまま、小学校、中学校と歳を重ねたリサちゃん。

中学三年生になって両親の転勤でアメリカに引っ越したリサちゃん。

高校三年生になって戻ってきたリサちゃん。

なんで?なんで私なんかに絡むの?

「再会の印にコーラかけてあげよっか?キャハハハハハ」

中途半端に欧米化した価値観で、リサちゃんはアメリカのホームドラマみたいないじめ方をするようになった。

冷たい、甘い、ベタベタする。

「中学んときよくやったねぇキャハハハハハ」

あそっか。これがリサちゃん。清々しいほどに変わってないんだ。

「ねぇ笠木ちゃん、これなぁに?」

さっきから私のカバンをゴソゴソしていた。

嫌な予感しかしなかった。

「それはやめてっ!お願いリサちゃん…」

「キャハハハハハ」

リサちゃんは清々しいほどに変わっていない。

リサちゃんは私の創作小説を、完成間近の小説をグシャグシャにしてトイレに突っ込んだ。

雨村に読ませたかった。

語りたかった。

世の中は不平等だ。

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積読大好き雨村くんは文芸部を書庫として利用する。彼は人間関係にも積み、詰む。 家猫のノラ @ienekononora0116

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