夜叉王の面頬
らんた
夜叉王の面頬
「出来てるではないか、
ここは
「これはその……失敗作でして」
それは立派な鬼面であった。自分の
「どこが失敗作なのだ? 傑作ではないか」
そう、この面を被り
「それがこの面は……死相が出るのです」
見ると傑作ともいえる面がいくつも壁に飾られていた。
「おのれえ! お前までも俺を馬鹿にするのか! 俺は政子を!! あの
刀を抜き、面の譲渡を迫る頼家。
「お辞めくださいまし!!」
夜叉王の前に出たのは
「お渡しします」
「それでいいのだ」
「この面は……呪われております。それでもよろしいので?」
もう一人の娘、
「構わんぞ。我は死んだも同然の身。亡者となって政子を討つ!」
その声を聞くと桂は
頼家は刀を
「気に入った」
頼家の声もより黒きものに変わった。
「そ……その面は外せません。呪いが掛かってるのです! 頼家様の
夜叉王が言った。
頼家は顔をかきむしるように面を外そうとした。外せない!!
(いや、かえって好都合ではないか?)
「いや、より気に入ったぞ」
そう、
「食事は……食事はどうなさるので?」
「構わぬ。この面から食おうぞ……場合によっては北条の者どもの肉をな!」
頼家はもはや人間ではなかった。完全に鬼であった。
「夜叉王よ、おまえは
「残り一個の面はどうなされるので?」
「記念だ。くれてやる」
「そ、そうですか」
「それと、今日からこの
(政子を討ったら私は人に戻るのだ……。それまでの辛抱だ)
鬼面から涙が伝わった。鬼面は無情にも涙を吸った。
「頼家様……」
◆◇◆◇
以来頼家は修善寺から出ては北条側の武将を切り……武将の肉を食っていった。
正気を失った頼家に対し政子はとうとう修善寺へ特殊部隊を派兵する。
暗殺だ。
多勢に無勢。それでも必死に戦った。
「桂!?」
「私も戦います」
そう言って桂も鬼面を被った。まるで瓜二つだ。服まで一緒だ! 『瓜子姫』とはこのことを言うのか!?
敵を斬り倒し桂も手で死体の肉を運ぶ。
死体を食えば食うほどこの面は力を増す。
「さあ、私を置いて逃げるのです! 早く!!」
声までそっくりだ!
「私の本当の名前は
「何!?」
「私も鬼となって果てましょうぞ!?」
それを聞いた頼家は笑った。
「いいや、ともに地獄に参ろうぞ」
嬉しそうにいくつもの刃をかいくぐり切り倒す。そして内臓を
そこまでだった。桂も頼家も後ろから刃に貫かれる!
「我は鬼!!」
そう言って蹴り倒し、貫かれた己の力を振り絞って後ろの敵を斬り倒す。
しかし突然、闇が覆った。自分が被ってた面頬が取れる。呪いで取れぬはずの面が。何も見えぬ。
「おのれ、悪の化身……政子……末代まで呪ってやる」
懐から落ちる二つの鬼面。
「これは……!?」
暗殺者たちは驚いた。それはあまりにも傑作の鬼面だったからだ。
◆◇◆◇
夜叉王は
「罪なものを作ってしまった」
夜叉王は
「お前が『鬼』の生みの親か?」
ここにも暗殺者らが来ていた。
「捕えた僧からお前の居場所を聞いた。覚悟はいいな?」
剣を抜く暗殺者。
「お覚悟~!」
夜叉王は一切動かなかった。何も言えなかった。
◆◇◆◇
「よう、兄弟」
そこには鬼面をかぶった武士がいた。
「次はお前が殺される番だぞ? 政子に気をつけろよ? せいぜい将軍ごっこがんばれや? お前も俺のように暗殺されるのがオチだと思うがな?」
ふっと消える鬼面の武者。
「で、で、出た~~~~!」
◆◇◆◇
「
「父上!! そのお姿は……」
幽霊が鬼面を取ると自分のよく知る姿が居た。
「あいつが武家社会を壊したり裏切ったりしたら容赦なく殺せ。我の無念を晴らしてくれ。お前が次の夜叉になってくれ」
「おいたわしや……」
無念の声を聴くと幽霊はふっと消えた。
◆◇◆◇
頼家が夜叉として、
=終=
夜叉王の面頬 らんた @lantan2024
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