【面白かった点】
ノリが軽いです。もちろん、それは悪い意味ではありません。
何せ光秀といえば、どこぞのサイコパス社長よりも鬼畜な信長によって、ブラック企業も真っ青な過酷な労働の末に、ついには謀反を決意した武将。
まともに描けば、労基仕事しろのシュプレヒコールが上がります。そんな凄惨な半生を記すには、これくらい軽やかな方が面白い。
【良かった点】
じゃあ、ウェブにありがちななんちゃって歴史小説なのかというと、たしかにスナイピングで義元を留めていたりと、ツッコミどころは多々あれど、この作者さんはきちんと設定考証しています。そこがとても良い。
【期待している点】
何せ桶狭間からスタートですから、まだまだ物語は始まったばかり。ここからどんなブラックぶりを光秀は軽快にかわして、スローライフを果たすのか。期待です。
歴史ものは難しい。明確な資料が残っている現実が下敷きになっているため、ファンタジーを書くように、世界観や習俗などを空想のみで書くわけにはいかない。
読むほうも同様に、それなりの知識や元々の関心が求められる。非常に敷居が高いジャンルなのだ――――――
っと思ったそこのあなた! この作品をぜひ読んでいただきたい。
序盤からグイっと引き込む、印象的なシーン。
時は1560年、時代は戦国、桶狭間。
伏したるは、明智光秀(実はその息子)と後の前田利家
狙うは、今まさに織田軍に攻め込もうとせん、今川義元の陣
彼らの目的は、もちろん義元の首
しかしその胸の内は
「義元の首を土産に勝ち組(予定)の信長に雇ってもらおー! それから適当に遊んで出世して、趣味に生きてやるぜ!」
というもので!?
主人公は、転生者で元現代日本人。現代人の感覚を残した彼の目を通す事で、世界観にスッと入りやすく楽しめる構成になっています。信長、秀吉、利家など、歴史の授業や、大河で知ってる武将たちが沢山出てくるので歴史ものにありがちな、『名前が覚えられないよ~』が無いのもいいですね。
元々歴史ガチ勢の作者様ですので、歴史ものが好きな方にもお勧めできる本作でござる。にんにん