生贄になった天邪鬼と瓜姫

~序~

 人間が山の中で大声を出していた。その声を聴いて天邪鬼は呪文を唱えた後、その人間そっくりな声で返す。驚く人間に次におどろおどろしい声で「そなたは山の神を大事にするか?」と天邪鬼は聞く。人間は恐れおののいて山を駆け下りる。くすくす笑う天邪鬼の子たち。そう、北の大地では天邪鬼の別名は山彦やまびこ。いたずらが大好きな鬼の子たちの日課であった。そんな鬼の子供に試練がやって来る。三〇年に一度生贄を差し出す日なのだ。谷から白羽の矢を打ち、屋根に刺さった五歳以上十歳未満の家の子を生贄として差し出す。その白羽の矢は自分の家に刺さっていた。泣き崩れる父と母。

 一方の人間の里にも生贄の儀式が行われていた。谷から打ち放った白羽の矢が刺さった七歳以上十歳未満の女の子を生贄に差し出す。生贄に決まった子は瓜の形をした箱に載せられ、川に流された上で清めの儀式を行う。その子は生贄と決まったから瓜姫と名を改める。父と母から引き離され神社の横の家での生活に変わる。


 これは悲しい東北の物語。

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