解説

 この物語は岡山北部二子山伝承の「星を取り損ねた天邪鬼」もしくは「空を取り損ねた天邪鬼」と岡山民話の瓜子姫伝承、そして大物主大神の伝承を混ぜた創作童話である。


 「星を取り損ねた天邪鬼」は星に願いを込めている少女を見て嫉妬して星を取ろうとして空に向かって石畳を作ってあと一歩というとこで失敗し石の下敷きとなるというもの、「空を取り損ねた天邪鬼」の場合は天狗の羽団扇によって起きた風によって石畳が崩れ天邪鬼は石の下敷きになるという伝承です。ここで要注意なのは星や空を「あと一歩」まで取れそうだったと言う部分で天邪鬼がやはり「空」や「天空」の神で零落してしまった神の側面を民話伝承で伝えるものとなっている。


 岡山伝承の瓜子姫は糸も無いのに織物を作るという織姫的要素が特に強い瓜子姫である。天邪鬼が嫉妬し、瓜子姫を柿の木に縛って瓜子姫の服をはぎ、瓜子姫になりすますも婚姻の儀に行く途中に正体がばれ、八つ裂きにされるといういパターンが多く、天邪鬼に対する制裁が苛烈なのが特徴である。


 天邪鬼は国津神である天逆女に仕える鬼であることからもちろん大国主に仕える鬼でもありだいだらぼっちになって国土を変えるいわゆる国づくりを行う鬼でもあります。今回は既に大国主が国譲りを行った後という設定にし、大国主の和魂である大物主大神がいる奈良に身を寄せたという形にしております。


 大物主大神というのは巨大な黒の蛇、または黒竜の姿になることも特徴的ですが名前が大いなる物(=鬼)の主という意味もあり大国主同一人物説まであるくらいです。


 今回は同一人物説は採用しませんでしたが名前から分かる通り鬼の側の神です。疫病も起こします。気になる方は本作では取り上げなかった箸墓伝説も調べてみてください。


 今回の作品はいかがでしたか?


 それではまた次回作でお会いしましょう!

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