一味違った、異世界ファンタジーを

「降臨の地」に度々、現れるクダリ。その手に持つのは神器。
その世界の民は彼らを敬い、その知恵と神器のもたらすであろう御業を信じて疑わない。そんな中、新たに出現したクダリと思しき男女。彼らの降臨が、世界を大きく変えることになる。

異世界と現実世界。
それらの差異や、現実世界に戻るための奮闘を描いた物語は多々あり、本作もその例に漏れないわけですが、他作品とは一線を画すものになっています。

その理由は、緻密な心理描写にあります。
心理描写という面で、いかにして違いが出るのか。答えは、その人物に共感できるかどうかだと思います。たとえば皆様の中で、ヒーローというのは一様にカリスマ性を備えており、決して折れない強靭な心を持つイメージがあるのではないでしょうか。もちろん、そういった人物像を持つ主人公は魅力的です。

ですが、本作の主人公たちはそうではなく、私たちと身近な印象を覚えます。前述した、ヒーローのような第一印象ではありません。しかしながら物語が進むにつれて、その印象は覆されます。葛藤や衝突の中で変化していく、そういった中で思わず応援したくなるのです。

読み進めていくうちに、登場人物たち一人一人の生きているような凄まじい熱量に、圧倒されること間違いなしの一作です。戦闘や出会いなどの異世界ファンタジーの醍醐味を踏襲しつつ、緻密な心理描写によってオリジナリティの加えられた本作を是非、楽しんでみてください。

ちなみに、関連小説の『異世界残酷物語』なども読んでおくと、作者様の構築した独自の世界観も大いに楽しむことができます。