第167話 薔薇の竜

 天空で流星が切り結ぶ。

 六つの星は破壊の嵐を撒き散らし、余波だけで遊園地を廃墟へと変えてしまう。だが今はそんなことに構っている暇すらなく――。


「どうしてこんな遊園地場所にお前たちが!?」

「言ったはずだ! 我らは“鍵”を探している! 失われた誇りを取り戻すためになァ!!」


 螺旋槍の側面に右刃を添え、ジルの一撃を受け流す。

 更に振り向き様の左刃に蒼穹を纏わせて斬撃を放つが、連射される螺旋の弾丸と激突。空に爆炎の華を咲かせるに留まる。

 しかし一見すれば、ジリ貧でしかない防衛戦も決して無駄じゃない。こうして刃を交えなければ分からないこともあるから。


「こっちはお前たちの侵攻を食い止めるために戦っている。撃ってこないのなら、戦う意味もない! それに一般人を巻き込む必要も……」

「貴様らは既に奴の実験・・・・に巻き込まれているのだよ! 生きとし生ける者、全てがなァ!」


 やはりコイツらは意味もなく襲って来る怪物でもなければ、ヒーロー物の怪人でもない。何か大きな思想の元で動いている。俺たちが思っているよりも大きく、複雑な――。

 だから連中と戦って、たおして、世界の平和が取り戻されました――なんて結末が待っているとは思えない。

 だが今の俺は――。


「何を……!」


 竜騎兵奴らの想いに返す言葉を持たない。いや、その術を知らないというべきか。

 ただここで退けば、多くの犠牲者が出てしまうことだけは確かだ。だからこそ、戦う以外に道はない。


「邪魔……」

「それはこちらの……」


 視界の端で桜色の砲撃が舞い荒ぶ。

 直後、凍気が吹き出し、白銀の刃が煌めく。


「ちっ、チョロチョロしやがって……!」

「なるほど、貴様も超越者の一人というわけか。しかし脅威は排除する!」


 纏わりつこうとする鎖の爆撃を高速で放たれる水流刃が弾いていく。

 魔力弾の撃ち合いの発展形。その極地というところだろう。


「だが私にとって、誇り以上に大切なものがある。それは貴様の命を飛び散らせることだ!! さあ血肉を喰らい合う闘争を続けようじゃないか!!」

「語る言葉を持ち合わせないのは、お互い様か。なら……」


 ひとまず現状の戦力は拮抗している。こちらの援軍が来るまで何とか耐えられそうではあるが、それは相手側の援軍が来ない――という希望的観測に基づいた思惑。

 軍の到着に合わせて向こうの援軍が来た時は逆に押し込まれる可能性もあるし、これまでの闘いを思えば、むしろ来ないと想定する方が危険すぎる。

 現にあちらの戦力は、学園対抗戦の時よりも少ないのだから。

 つまりこのまま小競り合いを続けても、状況が好転する可能性は限りなく低いということ。


「貴様ァ、私の戦いに集中していないな? 何たる侮辱! 決して許せないなァ!!」

「特異点が!?」


 そんな闘いの最中、またも青い海に巨大なあなが開く。

 開かれた孔の中からは巨大な眼光が覗き、既に膨大な魔力が充填されていた。


「薔薇の竜……!?」


 そこにいたのは、真紅と翡翠で彩られた巨大な竜種。

 見たこともない種類だが、例の如く出現した時点で竜の息吹ドラゴンブレスの発射体勢に入っていた。


「さあ、やれっ! “ローゼンドレイク”! 奴の憂いを全てき尽くしてしまえ!」


 それも狙いは俺じゃない。

 破壊の放火は眼下で逃げ惑い、戦っている連中へと向けられていた。

 これは決闘じゃない。防衛戦なのだから、全体を見て戦わなければならないのは当然の話だろう。

 でも奴には、それがお気に召さないらしい。


 ジルと薔薇の竜。

 そして数多の軍勢。


 全てを薙ぎ払うためには――。


「■■■■■――!!!!!!」


 放たれる破壊の放火。

 俺は自らの意志を以て、再び限界を超える。

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『剣翼ノ白騎士』~出来損ないだと馬鹿にされている俺が、神の名を冠する【魔導兵装】と共に【最強の魔導騎士】へと成り上がる。どうしてそんなに強いのかと言われても、普通に力を封印していただけですが?~ リリック @LyricSIG

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