こじらせ男子大学生の話

@shimo_well

第1話

大学生には勉強、サークル、バイト、恋愛のうちから2つしか選択できないなどと言われている。高校までは毎日決まった時間に寝て起きて、密なスケジュールで動くことが出来たが、大学でそれは難しい。時間の余裕と周りの人たちに影響されて自堕落な生活を送るのが常である。


「そもそも今の生活では恋愛する余裕なんてないんだよ。恋愛したいかどうかの次元にいないから恋人を作りたいとか思えん」

「でも最近よくラブコメ読んでますよね、先輩」

「あれは人気なラブコメの批評してボロクソ言うために読んでるんだよ。読まなきゃ文句は言えないからな」


最近のライトノベルなんか読んでいると、冒頭で恋愛しないなどのたまう高校生が巻末では彼女が出来ていたりするし、現実どころか創作すら信用することが出来ない。


「やっぱり先輩は偏屈ですね~」

「ほっとけ」


大学のフリースペースで対面している女子は後輩のキット。オタクサークルの後輩なで、みんなハンドルネームしか名乗らないので本名は知らない。10年くらい前のコアなアニメが好きとSNSで呟いたら彼女も見たことあったらしく、ある時一度会って話そうということになった。話してみるとアニメの趣味はあまり合わなかったが、音楽の好みは不思議と同一人物なんじゃないかと思うほど一致して仲良くなった。それ以降授業の空きコマにこうして駄弁るのが日常になっている。


「先輩も本当は恋愛したいんじゃないんですか~?」

「したくない」

「ふーん、じゃあ週末にあの映画観に行きましょうよ。この作品で私は良かったところ、先輩は悪かったところを言い合ってどちらが多く出せたか勝負しましょう。負けた方がご飯おごりで!」


恋愛映画に誘うとかこいつ絶対俺のこと好きじゃん。オタクちょろいからそうやって誘うの良くないよ。ドキドキしちゃう。

ネットなどでは勘違いオタクがみんなに優しい女子に告白してあっさり撃沈、そしてそれを裏で笑われるなど悲しい事件が多く見受けられる。悲劇を繰り返さないように自分に気があるようなムーブをされても勘違いしないことが平穏な生活を送るためには肝要なのだ。


だから俺は舞い上がる気持ちを抑えて平静な心で答える。


「観に行こうか。勝負は俺が勝つから多めにお金を用意しておくんだな」

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