第9話 第三十の月
第三十の月。死の時。
セレーネ、外においで。今夜は天気がいいよ。
空気もおいしい。透き通るくらいに清々しいよ。
見てごらん。月があんなにも輝いて見える。
明日は新月だ。なのにあんなにも綺麗だ。
あんなに綺麗な月を見るのは初めてじゃないかい?
さあ、わたしと躍ろう。
病のことだって?
気にするなよ。ほら、立てるだろう?
体のことだって?
気にするなよ。だって君はもう体を持っていないんだから。
死の舞踏だって?
………………………………。
ふふっ、冗談だよ。さあ、わたしの手を取って。
あまりレディを待たせるなよ。慣れてないんだから。
初めは少し気丈に振舞っていたっけ。
でも、上手く欺いていただろ?
偉ぶって、知ったかぶって、君を怖がらせまいとしていた。
不器用なりに努力はしていたのさ。
君は気づいていたかもしれないが。
なあ、セレーネ。
人は死んだらどうなると思う?
時々、わたしは自分が何者であるかわからなくなるんだ。
死神なんて、いるはずない。
君は正しかったのかもしれない。
住む場所が変わるったって、誰がそれを証明するんだい?
わたしがかい? 自分が何者かもわからないわたしが?
わたしは誰? 死神なんているはずない。
怖いよセレーネ。
人は死んだらどうなるの?
わたしを見つけて、セレーネ。
セレーネ。
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